出生直後にべつの新生児と取りちがえられた男性(60)の記者会見をテレビで見た。顔は画面に出てこないので表情はわからないが、おだやかな話しぶりから、男性のまじめな人間性はよくわかった。

 

裕福な両親の長男として生まれたのに、産院のミスで男性は中卒で就職しなければならなかった。

 

記者会見で印象的だったのは、育ててくれた母親への感謝の念だった。このときは、たとえ貧しくとも家庭の暖かさが感じられて、「氏(うじ)より育ち」ということわざの真理を再認識した。

 

とはいえ、大学へ行きたかった男性にすれば、大卒と中卒の差はあまりにも大きい。「学歴がすべてではない」と気休めのようなことをいう人もいるが、そういうことを口にするのはおおむね大卒の人間である。

 

男性のじつの弟たち3人は、「まだ人生は20年も残っている。取り戻しましょう」といったという。このことばも、重苦しい事件にいくらかのあかるさをもたらしてくれた。

 

男の兄弟4人が、離れ離れになっていた長兄を囲んでこれから絆をたしかめあう。

 

「血は水よりも濃い」(人の性質は環境よりも血統で決まる)ということわざもまた真理なのだ。

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その4

駒形堂は1400年前、浅草寺の本尊が初めて祀られたところに建つお堂です。