映画は、アーレントがアイヒマン裁判を傍聴して書いたリポートが、ユダヤ人社会を揺るがす大騒動を巻き起こした1960年前後が中心。ユダヤとナチスという重いテーマゆえ、こちらもいくぶん身構えて岩波ホールへ出掛けた。
それがハイデガーとの色恋など息抜きも随所にあって、思っていた以上に娯楽性があり、あっという間の1時間54分であった。
もちろん、いろいろ考えさせられたが、映画以外でも興味深い現象を客席で観察した。
上映中、咳き込む人が何人もいたのである。断続的ではあるが、かなりの人がゴホン、ゴホンと咳をしていた。カゼが流行っていた時期でも、こういう情景に遭遇した記憶はない。
理由は、すぐにわかった。
映画の登場人物は、どの人もやたらにタバコを喫うのである。とくにヒロインのアーレントはヘビースモーカーだった。
実際、アーレントは典型的なチェーンスモーカーだった。
とにかくタバコの煙がもうもうとスクリーンにたちこめ、これが嫌煙の人や、煙に敏感な人たちに反応したのだ。
女性監督のマルガレーテ・フォン・トロッタはベルリン生まれで、もともとは女優だった。1986年に公開された「ローザ・ルクセンブルク」ではヒロインを演じ、カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞している。
トロッタ監督は、タバコの煙に意味をもたせている。煙それ自体がアーレントの思索を暗示する重要なシーンとなっているのだが、煙アレルギーの観客にはつらかったと思う。
〔フォトタイム〕
駒形橋その2
昔は、駒形の渡しがあったところです。屋形船が浮かんでいました。
コメント
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電車の中や街中で突然に咳をしたり咳払いをする者が居る。
彼らは唾や痰の軽い嚥下障害があるのだ。