物心がついた頃から教員志望で、まさかメディアの世界で仕事をするとは大学4年まで思ってもいなかった。そんなわけでメディアの仕組みなどまったく知らずに記者になった。

 

したがって、メディアのルールのようなものに驚くことが多かった。用語の統一の厳格さも、その一つであった。

 

いまでもよく覚えているのが、アメリカ大統領になった人の名前。それまでリーガンと呼ばれていたのが、何月何日をもってレーガンにするというお達しがあった。

 

驚いたのは、自分のところの新聞社だけかと思っていたら、全メディアが一斉にレーガンへ変えたのである。さすが、ことばを生業(なりわい)にする業界だと感心したものだ。

 

ところが、けさの朝日新聞を見ると、社会面は「団十郎さんに最後のお別れ」となっているのに、テレビ番組欄は「團十郎さん告別式」となっていた。

 

同じ日付の紙面で、団十郎と團十郎が混じっているのは、なかなか見られないことだ。ちょっと離れているうちに、メディアの世界もずいぶん様変わりしたようだ。

 

そこで、唐突ながら、朝日新聞の編集責任者に提案をしたい。

 

もし、団十郎にするか、團十郎にするか、まだ編集局内でまとまっていないのなら、是非、團十郎でお願いしたい。

 

そうしてくれれば、團十郎さんも草葉の陰でとても喜んでくれるはずだ。12代目が生前、とても気にしていたのは、メディアに登場する団十郎という文字だった。市川宗家の当主として、先祖伝来の名前への思い入れは、それほどに深かったのである。

 

〔フォトタイム〕

 

国立新美術館その4

隣りの政策研究大学院大学の構内から撮りました。