昨日につづいてふたたび薮中三十二著『国家の命運』(新潮新書)をとりあげたい。その第5章「北朝鮮はなぜ手ごわいか」が興味深い。

 

薮中さんは2004年には3度、平壌を訪問した。小泉首相の再訪朝で拉致被害者の家族5人の帰国が実現したときである。その前後の6者協議の場でも北朝鮮の代表とやりあってきた。テレビニュースにしばしば登場した薮中さんを記憶されている方は多いであろう。

 

5章「北朝鮮はなぜ手ごわいか」で、薮中さんは北朝鮮との交渉の難しさをつづっている。よほどタフでないと、とてもつとまらない。薮中さんによれば、中国でさえ、北朝鮮には手を焼いているという。

 

<北朝鮮は、相当の規模で中国からエネルギーや食糧支援を受けている。また、条約上、北朝鮮が他国から攻められた場合に、中国は北朝鮮を守ることを約束している。常識的に考えれば、北朝鮮は中国に頭が上がらず、中国は北朝鮮に大きな影響力を持っているはずである>

 

<しかし、両国の関係はそれほど単純なものではない。おそらく北朝鮮は、現状、つまり朝鮮半島が南北に分断されていることが中国の国益にかなう、と見切っているのだろう。北朝鮮が崩壊すれば、中国国内へ難民があふれ出てくるかもしれない。朝鮮半島が統一されれば、中国の国境線までアメリカの影響力が押し寄せてくるのではないか、そうした心配が中国にはある。北朝鮮はその辺りを見切っているからこそ、中国をじらし、怒らせても平気でいられるのだ>

 

中国は、相当にしたたかな国であるが、北朝鮮は、さらにそれを上回るようだ。薮中さんは、アベコベな中朝関係を裏付けるような場面を目撃している。

 

20042月、第26者協議での出来事だった。交渉は難航し、厳しいやりとりを経て、朝鮮半島の非核化へのコミットメントと今後の作業について、やっとのことで6者の合意点が見いだせる状況にたどりついた。そして最終日前日の深夜、北朝鮮の修正要求について各国代表団も、仕方なく受け入れるという状況になった>

 

<アメリカ代表団は大統領にまで報告を上げて了承を取り付け、最終日に共同声明を発表する段取りとなった。小さな第一歩ではあっても、その意味は大きいと思われた>

 

<しかし、最終日の朝、会議がひらかれる釣魚台に着くと、どうも雰囲気がおかしい。中国の代表がわたしに近づいてきて、「じつは、北朝鮮が文言をひとつ修正したいといいだして因っている。いくら説得しても、NOなのです」という。どういう修正なのか聞いてみると、共同声明の本質とは関係がなく、なぜ北朝鮮が修正にこだわるのか理解できない内容だった>

 

将軍様から、なにか気にくわない文言を指摘されたのか。とにかくてこでも動かないのが、北朝鮮のやり方だ。

 

別室で中国高官が北朝鮮の代表をいくら説得しても、北朝鮮は頑なにNOを主張し、やがてアメリカ代表団は飛行機の出発時間だからといって会場を後にしてしまったという。

 

薮中さんは、そこまでは書いていなかったが、このとき中国のメンツは丸つぶれであったはずだ。

 

(しばらくコメントを休みます)

 

〔フォトタイム〕

 

東京ミッドタウン前その5

地下に光を取り入れるための開口部が前方にあります。東京ミッドタウンのみどころのひとつは、この開口部の下のスペースです。