衆議院本会議場で、初の所信表明を終えて席に戻った鳩山由紀夫首相を菅直人副総理が拍手で迎え、笑顔で握手した、と、きのう書いたが、以下は、そのつづき。

 

イラ菅といわれるように、どちらかといえば苦虫をかみつぶしたような、怖い顔が多い菅さん。それが、ホールインワンをだしたときのような、にこやかな顔。

 

3年に1度くらいの、まさに絵に描いたような喜色満面の表情であった。

 

高校の弁論大会のような鳩山さんの演説の、どこにそれほど感動したのだろうか、という感じ。あの満面の笑顔は、ちょっとミステリアスであった。

 

一夜明けたきょう、朝日新聞をひろげたら、「閣僚で唯一 菅氏に言及」という記事がでていたので、あ、こういうことだったのか、と、やっとナットクできた。

 

さきほど<高校の弁論大会のような>と、つい口にしたが、正直に告白すると、じつはそんな偉そうなことをいえたものではなかった。鳩山演説をあまり真剣に聞いていなかった。その日の夕方に配達された夕刊に所信表明の全文が出ているのだが、これも読むのを忘れていた。

 

あわてて夕刊を読んだら、たしかにこんなくだりがあった。

 

<今後もまた、わたしと菅副総理のもと、国家戦略室において財政のあり方を根本から見直し、「コンクリートから人へ」の理念に沿ったかたちで、硬直化した財政構造を転換してまいります>

 

朝日記事には、<所信表明に閣僚の名前を入れるのは異例。政権内で浮上する「菅外し」の動きを封じ、首相自ら菅氏との連帯感を示す狙いがあったとみられる>とある。そのとおりで、菅さんが感動するのも当然だ。

 

鳴りもの入りの「国家戦略局」構想だったが、ケチばかりついている。戦略室から戦略局への昇格に必要な法案の提出は見送られるし、菅さんが兼任するはずだった党の政策調査会長も廃止された。世間からも、「国家戦略局」という名称そのものに反対論がくすぶるなど散々だ。

 

おかしなことに参院民主党では、政策審議会がそのまま存続するのである。菅さんが、カチンときているのは、明らかだ。

 

それにしても、鳩山さんという政治家は、したたかである。演説に菅さんの名前を入れたのは、もっと深謀遠慮があるとみてよい。つまり、小沢一郎幹事長への牽制だ。

 

ここまで書いたところで、いきなり林彪の顔が浮かんできた。毛沢東が、自分の後継者として林彪を指名し、それを法的に保証したにもかかわらず、林彪はクーデターを敢行した。有頂天になったうえ、待てなかったのである。

 

鳩山さんは、所信表明に菅さんの名前を書き入れたが、後継者に指名したわけではないので、林彪とはちがう。賢明な菅さんは、そんなことなど百も承知だろう。これからも、じっと我慢の子でいると思うが、小沢シフトで鳩山首相が頼りにしているのは自分だけという自負心は、一段と強まったはずだ。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その2

新しい根津美術館は、隈研吾氏の設計。「和」を基調にし、垣根も竹林でした。