新聞やテレビだけでは、中東問題の深層は、なかなかつかめない。せめて現地の空気でも吸ってくれば、すこしは理解できるのだろうが、いまだにその機会はない。
先日、試写会で「シリアの花嫁」という映画をみた。ガザ地区ほどの殺伐さはないけれど、舞台となったところも紛争地である。たとえ映画であれ、ずいぶん現地の雰囲気がわかった。
イスラエルのエラン・リクリス監督の作品で、2004年のモントリオール世界映画祭では、グランプリはじめ4冠受賞に輝いたという(2月21日から岩波ホールでロードショー公開)。
映画の舞台は、イスラエルが支配するゴラン高原。もともとはシリア領であったところだが、1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領された。人口約4万人。そのうちの半数は、イスラエルからの移住者で、残りの半分は、シリア時代から住む人々。かれらは、イスラムの少数派であるドゥルーズ派の住民で、いまなおシリアへの忠誠心を捨てていない。
いったん、軍事境界線を越えてシリア側へ行けば、もう戻れない。映画「シリアの花嫁」は、イスラエルが支配するゴラン高原のマジュダルシャムス村から境界線を越えてシリアの男性に嫁ぐドゥルーズ派の女性の一日を追ったものだが、こんな現実があるのかと、驚くことが多かった。
映画には、家族を分断されたドゥルーズ派の人々が、軍事境界線をはさんで拡声器で、近況を語りあう場面がある。そういう場所を、「叫びの丘」というそうだ。映画と同じ光景が、現地でもみられるのだろう。
携帯の時代に、なにも拡声器で会話することもあるまい、と思うのは、平和ボケの国民ぐらい。肉眼で、お互いの無事を確認し、声を掛け合い、絆を深めたい気持ちを抑えることなど、だれにもできないのだ。
同じ分断でも、朝鮮半島の場合、38度線をはさんで、南北住民同士の、拡声器による対話は、おそらく一度もなかったにちがいない。軍同士の、すさまじい音響の応酬は、あったけれど。
〔フォトタイム〕
旧安田庭園その1
墨田区の旧安田庭園をのぞいてきました。
コメント
コメント一覧 (12)
今年ほどマスコミ不信の年も無かったと思いますが、今度の悲劇も本当のところは???という感じですね。
例の「痛いニュース」。朝日・毎日・産経の赤字決算を受けてのネガティブなコメントの嵐。コメントの、「若年層だけが新聞を読まないのではない。」「(購読者数)回復の見込みがまったく無い」というのはまったく正しいと思います。
TVも優勝選手の浅田選手へ「転等している大きなパネル」。その上で、失敗の理由を長々とインタビュー。おかしいのはNHK・TBSだけかと思っていたらフジまでとは。彼女の演技のとき、音を絞る・着地の瞬間「転べ」と大声を叫ぶ(YouTubeに証拠多数)。逆境を跳ね返しての優勝に対して「屈辱の写真」。新聞だけでなく「TVも終わったな。」と思っている日本人は多いでしょう。
YouTubeがマス・メディアの捏造を明らかにし破滅の淵に追いやったのかもしれませんね。
来年は一般企業以上にマス・メディアへの風当りが強くなる事でしょう。侮日新聞が潰れるでしょう。酔っ払いが記事を書いたり、小学生6年の算数ができない新聞もどうなることか?
少々、早いですが大島さまにとって来年は良い年でありますように。いままでの妄言・放言の数々お許し願います。
エルサレムに「嘆きの壁」があり、ゴラン高原に「叫びの丘」があるのですね。
ユダヤ人にとって「カナンの地」は、どこにあるのでしょう?
デフレと在庫積み増しのはけ口として「中東の火薬庫」を戦場にしないでと
願うばかりです。
いよいよ戦争という公共投資が始まるのでしょうか?
ちょっと心配です・・・。
メディアの試練は、来年もことし以上の厳しさでつづくと思われます。よいお年を。
それにしても、選ばれた民というのに、ユダヤ人もまた試練つづきです。
巻き添えにされる一般市民は、悲惨です。
ほんと、<くだらない政局で国の未来を謝らせないよう>に願っています。
こちらこそ、よろしくお願いします。きょうは、朝からTBSのドラマ「源氏物語」をたのしみました。
>それにしても、選ばれた民というのに、ユダヤ人もまた試練つづきです。
悲しいかな、ユダヤ人を流浪させ、今日の危機の土台を作ったのは「ローマ帝国」でした。
ユダヤ人の心のよりどころは元は「エルサレムの神殿」であり、ローマによる神殿の毀損以降、その場所には神殿は再興されることなく、イスラム教の「岩のドーム」が建ってしまったのです。
ユダヤ人の宗教は神殿犠牲からシナゴーグ中心の信仰形態へ根底から変質せざるを得なくなりました。
現在でもユダヤ教の最右翼は、岩のドームを壊し神殿を再建せよといいますが、これはほぼ不可能なことです。
したがってこの争いの種は、歴史が刻印したもので、ユダヤ人とイスラム教徒が存在する限り永遠に続くでしょう。大国の植民地経営が、宗教を変質させてしまい、後々まで報復の連鎖を生んでいます。
ちなみに、ローマ帝国のルール無視の植民地経営による「法治国家」としての破綻から生じた(政治的利害のために無罪の人間を死刑と判決したことに対する反対)のが、キリスト教です。
あちこちで、シナゴーグ、みてきました。