きのうも、イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ地区に対する空爆を続行したという。死者286人、負傷者700人以上とか。ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスも徹底抗戦の構えで、長期化の可能性もあると、けさの産経新聞は報じている。

 

新聞やテレビだけでは、中東問題の深層は、なかなかつかめない。せめて現地の空気でも吸ってくれば、すこしは理解できるのだろうが、いまだにその機会はない。

 

先日、試写会で「シリアの花嫁」という映画をみた。ガザ地区ほどの殺伐さはないけれど、舞台となったところも紛争地である。たとえ映画であれ、ずいぶん現地の雰囲気がわかった。

 

イスラエルのエラン・リクリス監督の作品で、2004年のモントリオール世界映画祭では、グランプリはじめ4冠受賞に輝いたという(2月21日から岩波ホールでロードショー公開)。

 

映画の舞台は、イスラエルが支配するゴラン高原。もともとはシリア領であったところだが、1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領された。人口約4万人。そのうちの半数は、イスラエルからの移住者で、残りの半分は、シリア時代から住む人々。かれらは、イスラムの少数派であるドゥルーズ派の住民で、いまなおシリアへの忠誠心を捨てていない。

 

いったん、軍事境界線を越えてシリア側へ行けば、もう戻れない。映画「シリアの花嫁」は、イスラエルが支配するゴラン高原のマジュダルシャムス村から境界線を越えてシリアの男性に嫁ぐドゥルーズ派の女性の一日を追ったものだが、こんな現実があるのかと、驚くことが多かった。

 

映画には、家族を分断されたドゥルーズ派の人々が、軍事境界線をはさんで拡声器で、近況を語りあう場面がある。そういう場所を、「叫びの丘」というそうだ。映画と同じ光景が、現地でもみられるのだろう。

 

携帯の時代に、なにも拡声器で会話することもあるまい、と思うのは、平和ボケの国民ぐらい。肉眼で、お互いの無事を確認し、声を掛け合い、絆を深めたい気持ちを抑えることなど、だれにもできないのだ。

 

同じ分断でも、朝鮮半島の場合、38度線をはさんで、南北住民同士の、拡声器による対話は、おそらく一度もなかったにちがいない。軍同士の、すさまじい音響の応酬は、あったけれど。

 

〔フォトタイム〕

 

旧安田庭園その1

墨田区の旧安田庭園をのぞいてきました。