昨夜のNHK番組「王監督のメッセージ」を真剣にみた。勝負師の人生とは、こういう生き方なのだろうと思った。昔、現役のONと親しい人が、こう漏らしたのを覚えている。「選手生活を引退したあとも、グラウンドに長く立っているのは、王さんのほうだろうな」と。予言どおりだった。

 

王監督、68歳。何百万人にひとりの、典型的な天才だと思う。しかし、王さんは、一度たりとも、自分を天才だとは、思わなかったにちがいない。むしろ、自分は天才ではないと信じ、自分が生き延びる道は、ほかの人よりいかに努力するかにあると、心に決めて、自分を鍛え上げてきたと思う。

 

町田行彦元コーチが明かした、王選手のノートは、それを物語っている。分厚い大学ノートには、びっしりとメモ書きがしてあった。そこには、たとえば、「バットは、傘を持つごとく楽に持つ」という書き込みがあった。どういうことでも心に留める王さんの気迫と細やかさを感じた。

 

王語録のなかに、「この一球は、二度とない」というのがある。これは、野球だけでなく、人生一般にも通じる。人生は、カメラマンにおけるシャッターチャンスのようなもの。一度しかないチャンスを逃してはならないのだ。

 

ことばというもののすごさは、それが人を動かすところにある。王監督の、この一球は、二度とない」によって、開眼したのが、ソフトバンクの松田宣治選手。試合のあと、全打席を研究し、次回に活かしていた姿にうたれた。

 

王監督はいう、「人間はミスをするものだが、プロはミスをしてはいけない。だから、プロは人間であってはいけない」と。きびしい人だ。第一回ワールドベースボールクラシックの優勝に貢献したイチローが、王監督を、「ことばだけではない、存在感がありました」と評していたのが、印象に残った。

 

〔フォトタイム〕

 

竹芝桟橋その7

夕暮れ時の客船。なかなか風情がありました。