隠密、お庭番、忍者などと呼ばれた時代はもちろん、情報部員といわれる現代でも、スパイという職種には、どことなく不気味な陰影と、哀感がただよう。

 

決して表舞台で脚光を浴びることはないし、どんなに業績をあげても、ほとんど後世に伝わることもない。しかし、かれらの仕事が、組織の命運を決めることがある。

 

実際は、地味な仕事のはずだが、隠花植物のような存在が人々の関心をひきつけるのだろう、スパイを主題にした映画はすくなくない。

 

スパイ映画に色模様はつきもので、そこに登場するヒロインは、例外なく美人と相場が決まっている。現実世界でも、女スパイは、容姿端麗なのかもしれない。

 

けさの産経新聞で黒田勝弘ソウル支局長が、興味深い女スパイ事件を伝えている。記事によれば、韓国では、北朝鮮からの脱北女性が韓国軍将校などと肉体関係をもち、軍情報を入手して北朝鮮に送っていたスパイ事件が明るみに出て話題になっているというのだ。

 

北朝鮮の女スパイは、34歳。彼女に軍の情報を提供していた将校は、26歳。彼女が脱北者を装って韓国へ渡り、この将校と出会い、そして籠絡するまでの日々は、映画のようにドラマチックであったにちがいない。たぶん、映画のヒロインのように、魅惑的な女性なのだろう。

 

それにしても、つらい任務ではないか。おそらく、彼女は、逮捕されて、ほっとしているのかもしれない。

 

〔フォトタイム〕

 

桜田門その4

150年近く前、大老井伊直弼が、この江戸城門前で殺されたとは、想像もできないほどに桜田門周辺は静かです。