女優の菅野美穂がインドを訪れた、NHK「プレミアム10――菅野美穂 インド ヨガ聖地の旅」(10月26日夜10時から放映)が面白かった。ヨガといえば、足を複雑に組んだりして、瞑想する姿くらいしか浮んでこなかったので、この番組で紹介されたヨガの多様性に驚いた。

 

デリー郊外のマジュドゥールハトラ公園では、いくつかのグループが、それぞれの様式によるヨガに没頭していた。ヨガの教室もあれば、ひとり、正座して瞑想する人もいる。菅野が、そのひとつのグループのヨガに参加した。胡坐(あぐら)をかいたような姿勢で、組んだ両足をバタバタさせていると、突然、うしろのほうで、ワッハハ、ワッハハ、と、大きな笑い声がした。

 

驚いて菅野が振り返ると、公園のむこうのほうに数10人の中年男性が立ったまま、円陣をつくっている。豪快な笑いに、あの浪越徳治郎氏を思い出した。新婚旅行で来日したマリリン・モンローを指圧し、世の男性を羨ましがらせた人だ。

 

菅野が、このグループに加わった。「では、気持ちよく笑いましょう! いきますよ。1,2,3、ワッハハ」と、リーダーが音頭をとり、それにあわせて、みんなが両手を高々とあげて、声高らかに笑った。ほんとに、気持ちよさそうな笑いである。みていた菅野も一緒になって、ワッハハ、ワッハハ。そして、ラーマ神へのお祈りを108回。これもヨガだという。

 

笑いが、健康に効果のあることは医学的にも立証されている。それは、医学者でなくとも納得できることだ。しかめっ面より、笑顔がいいことは、だれにだって、わかる。おそらくどこかで、笑いを治療に取り入れているところもあるのではないか。患者を慰問する道化師もいると聞く。

 

ことわざは教える。<笑いは人の薬(適当に笑うことは、健康のためによい)>、<笑う顔に矢立たず(笑顔の者は、矢を射かけられることがない)>、<笑う門(かど)には福来(きた)る(いつも笑い声が満ち、和気あいあいとした家には、自然と幸福がやってくる)>、<笑って太(ふと)れ(つねににこにこしていることによって、幸福を招き寄せよ)=以上、小学館の「故事ことわざの辞典」より>

 

しかし、笑いは、いつもプラスイメージで和気あいあいとしたもの、というわけには、いかない。不気味な笑い、お追従の笑い、耳を押さえたくなるような高笑い、人を小ばかにした笑いなどなど、いやな笑いもまた少なくないのだ。

 

『潮』11月号に、作家の村松友視氏が、<笑い方という厄介な世界>というエッセイを書いている。そこに、<男は、いつの日か自分の笑い方をつくる>ということばがあった。卑屈な、追従の笑いが、地位の上昇とともに高笑いになっていく。たしかに、サラリーマン社会では、そういう事例は、どこにもみられるものだ。

 

<私の周囲にも、自分で吐いた言葉に自分で反応し、ハハハハと笑ったあと周囲を見回しながら、笑いを求めるというタイプがいる。しかし、彼は中学生のときにはそんな笑い方はしなかったはずだ。いつの日か何かの理由で身につけた笑い方なのだろう。このタイプは意外に多く、ある年齢以上の集まりなどで、意味のない高笑いだけがひびきわたり、無理矢理に和気藹々(あいあい)の空気をつくりあげているむなしさがただよう場面は、いくらでも想像できるのだ。ハハハハにしろ、ホホホホにしろ、である>

 

そう村松氏は書いていたが、同感する人は、多いのではあるまいか。でも、これは、一部の人の話。できれば、自然に、心の底から笑える日々でありたい。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

10月29日、大池にオオバン(舎人)。

10月30日、ツバキ開花(百花園)。

10月31日、大安。メタセコイヤ紅葉(祖師谷・桜ヶ丘)。

 

〔フォトタイム〕

 

経済産業省その1

この建物を正確にいえば、経済産業省総合庁舎本館となります。