5月22日の当欄で、「中国が金日成・金正日親子を許せない20の理由」を書きました。これは孔健氏(チャイニーズ・ドラゴン新聞社編集主幹)の著書『中国だけが知っている金正日の真実』(幻冬舎)から引用してお伝えしたのですが、このブログをみた知人から、「北朝鮮にカジノがあるというのは、初耳。金正日が、よく許可したものだ」といわれました。中国側の「許せない20の理由」のひとつに、「(北朝鮮は)中朝国境付近に多くの賭博場を開設し、中国人顧客から大量の外貨を奪った」というのがありました。知人は、それを念頭において語ったわけです。
そのとき、「じつは、こういうこともあったのです」と、知人に北朝鮮の幻のカジノ構想を話しましたら、驚いていました。知人同様、「北朝鮮とカジノ」という組み合わせに意外だった方々もおられるかもしれないので、ふたたび孔氏の著書を拝借して書いてみます。
中国との国境近くに、新義州というところがあります。金正日は、この町を特別行政区に指定し、初代長官にヤン・ビン(楊斌)を任命しました。欧亜グループ会長のヤンという人物は、オランダ新華僑出身の実業家で、孔氏によれば、ヤンは金正日を「養父」と呼ぶほど、忠誠心を示していたそうです。
ところが中国当局は2002年、ヤンを中国国内で逮捕し、18年の刑を科して刑務所へぶち込みました。このとき、中国当局は、ヤンの逮捕容疑として、「脱税や特区内に大規模カジノ場のような不健全事業項目を含めたことをあげている」と、孔氏は書いています。
孔氏は、中国当局が怒った本当の理由は、「中国との国境につくる特区の行政長官を、金正日が中国側に一言の相談もせずに、勝手にきめてしまった」ことにあるとし、中国政府を信用していない金正日の姿勢のほうにより注目しています。わたしも、そのことに関心がないわけではありませんが、いちばん興味をもったのは特区にカジノをつくるという、ヤンの構想です。ヤンの逮捕がメディアを賑わしていたころ、そのことが報道されたかもしれませんが、わたしにその記憶がなく、この記述に目をひきつけられました。
ヤンの構想というのは、言い換えれば、金正日のプランということですね。孔氏は、新義州の特区構想をこう説明しています。
<新義州特区には、資本主義制度を認め、外貨の出入り制限をしない。50年間立法、司法、行政の自治権を与える、個人の相続権と私有財産権を許し、言論・出版・集会・結社および信仰の自由を保障する、通貨は米ドルという香港なみの特区である>
これが金正日の考えというなら、北朝鮮のイメージを完全にひっくりかえすもので、その構想で浮んでくるのは、香港というよりマカオに近いですね。現在、マカオは空前のカジノブームにわいていて、2006年のカジノ収入は68億ドル(約7956億円)だったとか。昨年、中国から1200万人近くがマカオを訪れ、カジノで散財していったそうです。なにしろ100万元(約1400万円)以上使う人はザラのようですから、カジノにとって中国人は神様です。
金正日の構想は、ギャンブルによわい隣人の性格に的確に照準をあてていたわけで、成功の確率は高かったように思えます。それだけに、中国政府も危機感を強く抱いたのでしょう。もちろん、カジノが、汚いカネをふつうのカネにするマネーロンダリング機能をそなえていることを北のドンは承知しているはず。いずれにしても、幻に終わった将軍さまのカジノ大構想が、よみがえる可能性は十分あるような気がします。
<きょう・あす・あさっての見頃の草花>
5月27日、ヘメロカリス、アカンサス開花(日比谷)、イワタバコ(百花園)。
5月28日、サツキ見頃(旧芝離宮)、カワセミ4羽飛来(武蔵国分寺)。
5月29日、コオホネ・アサザ開花(水元)。
〔フォトタイム〕
サンシャインシティその7
サンシャインシティの周辺は、相変わらず活気があります。JR池袋駅からつづくこの活気を、サンシャインシティまで呼び込みたいものです。
コメント
コメント一覧 (9)
先日の「中国が金日成・金正日親子を許せない20の理由」は、良かったですよ。外交カードに使えるものもありましたね。
今回の、「幻に終わった金正日のカジノ大構想」もいいですね。北朝鮮の狙いがよくわかります。
ギャンブルは、悠久の国(中国)の人も大好きですが、半万年の国(韓国)の人も大好きですね。(もちろん日本人もですが)
以前、朝鮮日報にて01年09月に「現代-北朝鮮、金剛山カジノ営業に合意 :対北経済協力事業の中に、北朝鮮内の5カ所にカジノを設置する」と報じられていました。これは、当然 韓国人の金と、マネー.ロンダリングが狙いだったのでしょう。(もっともその後、中止になっている様? ですね。)
金正日の夢は続いているようで、日経のNET EYEプロの視点、06年2月に田村さんが、マカオ資本はなぜ北朝鮮にカジノを開設したかについて書いています。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/20060209n1929000_09.html
マカオは国際金融市場に入れない国や裏社会にとってもっとも資金洗浄(マネーロンダリング)が容易な場所である。契約書類なしに個人的な信頼関係だけで資金の帳簿上の移動を行う中国の伝統「飛銭」に加え、カジノのVIPルームで賭博を偽装して資金を振り込む。さらにマカオは国際金融都市香港との間でカネやヒトの行き来が自由なので、飛銭を国際的に展開しやすい。ライブドア事件で日本の検察当局は香港法人の裏口座を調べているが、このようなケースではマカオについても当然捜査のメスが入る。
韓国の情報筋によれば、マカオと平壌間は週2度の定期便があり、金正日総書記も何度か訪問しているし、マカオのカジノ王、スタンレー・ホー氏とも親しく、ホー氏は平壌・羊角島ホテルにカジノを開設している。
それを金正日の奴が考えたとしても一つも不思議では
有りません。中国人も韓国人も商売と賭け事が大好き
な人種と来ていますし、活動資金を得られる上に
資金洗浄機能のオマケ付きとなれば実行しないはず
が有りません。
逆に言えば中共政府が危機感を持つのは当然の帰結
ですなあ。自分所の人民を堕落させられた上に
せっせと獲得した外貨をも吸い取られるのですから
たまったもんじゃありませんなあ。それを相談も
無しにヤられたのですからヤンの逮捕も当然の帰結
だった事でしょう。
中国政府が面白い分けがなく当然でしょう。
それにしてもごね得外交を繰り返す北朝鮮は、ますます孤立化しますね。
金融制裁も解除されても、核放棄や恫喝を行う傍若無人ぶりは異常です。
マカオのカジノVIPルームの乗客は、中国の役人たちだそうですね。薄給のかれらが、カジノで散財できるのもワイロですよね。そうしますと、ワイロの額は、けたはずれということになります。
abusan さん
「カジノ」という映画に、カジノで儲けた客を追跡してカネを取り返すところがありました。カジノの本質はハゲタカ精神だと思います。
kyamaga さん
きょうの新聞に金正日が2男、3男を軍視察に同行したという記事がありました。どういうことか、ちょっと気になります。どう解釈しますか。
http://www.chosunonline.com/article/20070528000007
「金総書記は今年に入って計23回の公式行事に姿を現しており、この回数は昨年同期の42回に比べると半分ほどにしかならない」
「専門家は後継者争いが本格化すると予想」
そろそろ後継者を決めなければならないのも事実でしょうね。
もっとも、健康不安説はよくでているのでどこまで信憑性があるのでしょうか?
しかし日本人拉致問題の完全解決には、もう金正日体制の打倒しか方法はないように思うのですが。 北朝鮮の人権弾圧や核問題の解決だってそうでしょう。 彼らは体制維持のため、核兵器にしがみついているのですから。
しかし慰安婦問題の追及に熱心な国内の左派・人権派や、韓国の進歩勢力は、金正日体制の延命ばかりを主張します。 西岡力氏が「韓国分裂」などで書いておられましたが、韓国で金正日政権打倒を叫ぶのは一部の保守勢力だけになってしまったようです。 保守のはずのハンナラ党ですら、国民の支持を失うのを恐れ、対北宥和政策に傾いています。
韓国民はドイツ統合の例を見て、北の飢えた2000万の同胞を食わせて行く羽目になるのを恐れているのでしょうね。 また核を持った巨大な中国と、直接国境を接することになるのも怖い。 ならば日米と連携を深め、北朝鮮崩壊後の支援約束を取り付けるべきだと思うのですが、なぜか彼らは自分たちの首を絞める選択ばかりするのは何故でしょう?
このままでは私の愛する韓国が、悪の枢軸の仲間入りして世界から孤立し、やがては北朝鮮と共倒れになるのではないか、と心配です。
しかし日本人拉致問題の完全解決には、もう金正日体制の打倒しか方法はないように思うのですが。 北朝鮮の人権弾圧や核問題の解決だってそうでしょう。 彼らは体制維持のため、核兵器にしがみついているのですから。
しかし慰安婦問題の追及に熱心な国内の左派・人権派や、韓国の進歩勢力は、金正日体制の延命ばかりを主張します。 西岡力氏が「韓国分裂」などで書いておられましたが、韓国で金正日政権打倒を叫ぶのは一部の保守勢力だけになってしまったようです。 保守のはずのハンナラ党ですら、国民の支持を失うのを恐れ、対北宥和政策に傾いています。
韓国民はドイツ統合の例を見て、北の飢えた2000万の同胞を食わせて行く羽目になるのを恐れているのでしょうね。 また核を持った巨大な中国と、直接国境を接することになるのも怖い。 ならば日米と同盟関係を強化し、北の崩壊後には支援してくれるような約束を取り付けるべきだと思うのですが、韓国人が自分たちの首を絞める選択ばかりするのは何故でしょう? 例によってくだらない「自尊心」とやらにこだわっているのでしょうか?
このままでは私の愛する韓国が、悪の枢軸の仲間入りして世界から孤立し、やがては北朝鮮と共倒れになるのではないか、と心配です。
酒と美食の日々でしたから、健康体でないのはたしかですね。北朝鮮の場合、王朝ですから、是非はともかく、客観的にみても、もはや後継は世襲しかないという感じはします。幻の3代目になる確率は高いにしても。
62790287 さん
表向きは北朝鮮の独裁体制の崩壊を望みながら、本音では現状維持をねがっている。建前は、共栄共存でも、本音は自然死をまちわびている。北をみつめる国々、それぞれの国民の胸中も複雑なところがあります。でも、しずかに、マグマが変化してきたような気もします。