1月26日、安倍晋三首相は就任後、初の施政方針演説をおこないました。某紙のけさの社説は、安倍首相が、政治とカネをめぐる一連の不祥事に触れていないと憤慨していました。国民の政治不信を取り除くために、首相の決意表明はたしかに大切ではあります。ただ、そのことのみにグダグダと社説の3分の2以上を費やすというのは、いかがなものでしょう。国民生活に直結する、大きな課題がたくさん語られているのです。安倍さんをやっつけたい気持ちはわかるけれど、もっとほかの項目に踏み込んだ論評を読者は知りたいはずです。

 

安倍首相の演説には、「成長力強化」、「チャンスにあふれ、何度でもチャレンジが可能な社会の構築」、「魅力ある地方の創出」、「国と地方の行財政改革の推進」、「教育再生」、「健全で安心できる社会の実現」、「主張する外交」といったことが語られていました。どれも、重要な問題ですが、そのなかからひとつ、「魅力ある地方の創出」をとりあげてみたいと思います。安倍首相は、こう述べています(以下、産経新聞より)。

 

「地方の活力なくして、国の活力はありません。私は、国が地方のやることを考え、押し付けるという、戦後続いてきたやり方は、もはや捨て去るべきだと考えます。

地方のやる気、知恵と工夫を引き出すには、地域に住む方のニーズを一番よく分かっている地方が自ら考え、実行することのできる体制づくりが必要です」

 

同感ですね。私は、昔、「廃藩置県」ならぬ「廃県置藩」を提唱する論文を書いたことがあります。江戸時代は三百以上の藩があって、それぞれ自立するために懸命な努力をしていました。藩校をつくって子弟の教育レベルを高めたり、産業の振興につとめたりしていました。「廃県置藩」論の趣旨は、江戸期の藩制度のいいところを学んで、地方の自立をうながすものでした。

 

以前、劇団四季の浅利慶太代表に聞いた話ですが、地方公演では、旧城下町と旧天領のところでは、観客の入りがちがうというのです。もちろん、入りがいいのは、旧城下町のほうです。経済的にも、文化的にも、藩のほうが活性化というものに敏感で、そのDNAが、いまもなお残っているのでしょう。

 

安倍首相は、やる気のある町として、広島県熊野町の毛筆づくりを施政方針演説で紹介しました。熊野町で、国産の筆の約8割が生産されています。筆といえば、書道用とか、絵画用が浮んできますが、いま需要が伸びているのは化粧用です。とくに高級化粧筆は、アメリカの映画女優のメイクにも使われているとのこと。安倍首相のいうように、中央政府に頼ることなく、おのおの地方が江戸期の藩のような気構えをもって知恵と工夫を出し合い、それぞれの市町村を活性化してほしいものです。

 

<きょう・あす・あさって>

 

1月27日、ロウバイ開花(善福寺公園)。

1月28日、ツバキ開花(武蔵野中央公園)。

1月29日、ウメ・カンツバキ開花(日比谷公園)。

 

〔フォトタイム〕

 

上野東照宮その6

拝殿のほうからみた唐門です。表からみた唐門とはまた、おもむきがちがいますね。