毎月、月刊『清流』(清流出版)をたのしみにしている。「主婦たちへ贈るこころマガジン」というのが、この美しい雑誌のコンセプトだが、男性が読んでも面白い。1月号を手にして、表紙を眺めると、「今日からあなたも“箸美人”」というタイトルが目に飛び込んできた。

 

“箸美人”とは、なんのことだろう? このトシになっても、まだ箸の持ち方すらわかっていないオトコは、考え込む。考え込まなくとも、雑誌をひらけば、すぐに納得するはずなのに、パスカルに「人間は考える葦」と教わったオトコは、しばらく沈思黙考し、結局、なにも考えが思いつかないのを見定めてからページをひもとくのだ。やっぱり、特集「今日からあなたも“箸美人”」の前文に、知りたいことが出ていた。

 

<食べものをつかむとき、それを口に運ぶとき…‥。すべての箸使いにむだがなく、流れるような所作の人に見とれてしまうことがあります。美しい箸使いの人を“箸美人”といいます>

 

なるほど、そういうことですか。たしかに、美しい箸使いの人は存在し、その所作は茶道のお点前のように流麗である。まるで箸使いのアーティストのような人は、やはり女性のほうに多い。

 

いや、男性にも、1万人にひとりくらい、素晴らしい箸の達人がいるように思える。禅では、食事の作法は重要な修養のひとつだが、禅僧の所作にそれを感じたことがある。禅寺で精進料理を食するとき、そこには、それなりのルールがある。それを知らない人が食の場に混じっていると、人間の品性までが露呈しているようで見苦しい。これほどまでに箸の道は奥深いのだが、わたしをふくめ凡人はいまなおそれを知らない。この特集では、岩下宣子さんが、「箸使いのタブー23」を教えてくれているので、一部を紹介し、自戒ともしたい。

 

つ き 箸――箸で食べものを突き刺すこと。

迷 い 箸――どれを食べようか、箸を持ちながら迷うこと。

なみだ箸――滴の垂れるものを受け皿なく箸で運び、ボタボタとテーブルを汚すこと。

さぐ り箸――茶碗蒸しなどで、おいしいものがないかなどと箸で探すこと。

ねぶり箸――箸を舌で舐めること。

さか さ箸――箸を逆さにして使うこと。手に持つ部分を使うことになるので不潔。

上 げ 箸――箸を口より高く持ち上げること。

そ ら 箸――食べようと思って、いったん箸を出したのに止めること。

 

〔フォトタイム〕

 

コレド日本橋その5

東急百貨店日本橋店の前は、白木屋でした。コレド広場の一角に「名水 白木屋の井戸」の碑がありました。江戸の歴史が生きる街、日本橋は夏目漱石の小説の舞台にもなっていて、それを記念する碑もありました。