このなかで最初にみたい映画は、イングリッド・バーグマンの「カサブランカ」。映画館で、テレビで、レンタルビデオで、5,6回はみているはず。みるたびに、あたらしい発見がある。あ、こんなセリフがあったのだ、このシーンにはこんな小道具があったのだ、とあきない。本もそうですが、1回じゃダメですね。2回、3回と読んで、やっと味わいを感じる。もっとも、それに耐える本というのは、古典であり、名作ですね。映画も同じ。DVDになるのは、選び抜かれた作品ですから、当たり外れがない。
カサブランカ。フランスの植民地だったモロッコの首都。当時、カサブランカはまだドイツの占領下にはありませんが、すでにパリは陥落。ヨーロッパの人々がドイツ・ナチスから逃れてアメリカへ亡命するためには、リスボンから旅立つのだが、それは旅券を確保した限られた人だけ。大半はカサブランカで、はかない望みを抱いて、その機会を待っていた。映画は、この街でナイトクラブを経営するアメリカ人、リックを中心に展開します。演じるのは、ハンフリー・ボガード。カジノもあるこのクラブは、アメリカへわたる機会を必死になって探し求める亡命者たちの溜まり場でもありました。さまざまな人間模様が描かれていますが、ヒーローはやはりこの人物。亡命資金をえようとルーレットに賭ける男の美人の妻は、負けたら自分の体を担保にすることをリックにほのめかす。リックは、そういう女性を助けてやる、中世の騎士のような男。仏独の国歌合戦もありました。
ドイツの情報部員が殺され、旅券が奪われるという事件が発生。犯人は盗んだ旅券をリークに預け、リックはそれをピアノのなかへ隠した。その犯人を追ってドイツ人将校がカサブランカにやってきました。この旅券をあてにしていたのが、反ナチ運動のリーダー、ラスロ。バーグマンは、妻のイルザを演じますね。イルザは、夫と一緒に入ったナイトクラブの経営者がリックと知って驚きました。まだドイツ軍がやってこないころのパリ。リックとイルザは恋人同士でした。その夜、眠れぬままに、リックはつぶやきます。「世界には、ゴマンと酒場があるのに、彼女はここへ来た」と。
パリ陥落直前、ふたりは一緒に脱出しようと、約束していました。しかし、イルザは約束の時間に来なかった。カサブランカで再会したふたりは、こんどこそ、一緒に旅発(た)とうと誓います。しかし…もう、あらすじを披露するのはやめましょう。だれもが知っている話。まだ、みていない人には、迷惑な話ですから。それにしても、ハンフリー・ボガードは、容姿も、セリフも、行動も、カッコ良すぎます。バーグマンのほうは、生身の女性をみごとに演じていました。蛇足ながら、カサブランカの花もいいですね。
<きょう・あす・あさって>
平成3年(1991年)11月5日 宮沢喜一内閣成立。
〔フォトタイム〕
新宿御苑その6
中の池の周辺は色づき、水面はスイレンで覆われていました。
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