シリアへの渡航を計画していたフリーカメラマン(58)が、外務省から旅券返納を命じられた。要するに、危険な場所へ行くことはまかりならない、ということだ。ジャーナリストやカメラマンにとって、これはきつい。

旅券を返納させられたフリーカメラマンは、けさの朝日新聞によれば、「渡航と取材の自由はどうなるのか。突然のことで困惑している」と語ったという。

 かつてメディアの世界にいた人間としては、取材の自由といわれれば、とてもそれに異議申し立てをする勇気はない。

さりながら外務省の措置もわかる。やはりシリアへの渡航は危険が多すぎるのだ。

テレビを見ていて感じたことがある。殺害された後藤健二さんと親しかったという人たちがつぎつぎと登場し、後藤さんとの親密ぶりを語っていた。しかし、「後藤さんにシリア入りをやめるように強く忠告した」といった人は、わたしの見たかぎり、現地ガイド一人を除いてだれもいなかった。

そう思っていても、個人レベルでは言いにくいこともある。いうまでもないが、私的なアドバイスに強制力などまったくない。とすれば、外務省や警察庁といった公的機関の忠告というのは、とても貴重なように思える。