2015年02月

 中国は共産国家だという。そして主席の習近平はコミュニストだという。果たして、そうだろうか。マルクスが生きていたら、中国は共産国家だとか、習近平はコミュニストだとか、そんなことは認めなかったであろう。

 「なにが、コミュニズムだ。あの男の考えというのは、民族主義にすぎない。いや、ひょっとしたら、貴族主義かもしれないよ。なぜなら、いまキツネ狩りに夢中というじゃないか。イギリスを見るまでもなく、貴族たちはキツネ狩りが大好きなんだよ」

 こうマルクス先生がおっしゃったわけではないが、習近平主席が目下キツネ狩りに夢中なのは事実である。ただし、この場合のキツネは人間、もっと具体的にいえば、海外に逃亡した中国の汚職官僚のことである。
 習近平政権の汚職摘発作戦は、とどまるところを知らない。これからも取り締まりの手をゆるめることはあるまい。なぜなら、これしか中国共産党政権が生き延びる道はないからである。
 しかし、汚職役人の側も手をこまねいて傍観しているわけではない。かれらの一部はすでに家族と莫大な資産をたずさえて海外へ逃れている。その数、ざっと2万人前後。かれらが持ち出した資産は天文学的な数字になる。習近平政権は海外に逃げた汚職官僚をキツネと呼ぶ。要するに習近平のキツネ狩りとは、海外へ逃げた汚職官僚の摘発のことだ。
 中国のキツネたちが好む逃亡先は、アメリカ、カナダ、オーストラリアの3か国だという。いや、ひょっとしたら、日本にも中国のキツネたちがけっこうたくさん潜んでいるかもしれない。なにしろ、いまは日中関係がよくないうえ、日本は隠れ家に事欠かないからだ。









 


 


 


 

夜9時前のNHKニュースが、歌舞伎役者の10世坂東三津五郎の死を報じた。21日、都内の病院で亡くなった。やっぱり、だめだったのか。59歳だった。すい臓がんを克服し、舞台に復帰したときは、ほっとしたのだが……。
 まだ八十助(やそすけ)だった頃、よく勘九郎(のちの勘三郎)と踊ったり、芝居で共演していた。背格好が似た、息のあったコンビだった。その後、ともに大きな役者になった。踊りよし、芝居よしの華のある二人が57歳と59歳で逝ってしまうとは、世の中は非情である。
 平成16年、歌舞伎座で市川海老蔵襲名興行がおこなわれていたとき、勧進帳の弁慶を演じていた父親の市川團十郎が体調不良で突如、休演となった。
 代役は坂東三津五郎だった。がっかりして、なんとなく冷めた目で見ていたのだが、次第に三津五郎の弁慶に見入った。成田屋とはひと味ちがう大和屋の新鮮な弁慶に感動し、満足した。
 突然、代役を命じられても、なんなくこなしてしまう。三津五郎にかぎらず、ひとかどの歌舞伎役者はそういう心構えを忘れない。プロならば当然ではあるが、せりふひとつとっても、たいへんだ。
 不幸中のさいわい、という表現はおかしいが、三津五郎の弁慶を見られたのは、いま考えて見ると、とても貴重な体験だった。楷書のようにかっちりしていて、しかも草書のような華麗さもある弁慶が、いまも目に浮かぶ。
 ことし1月の浅草歌舞伎で三津五郎振付の「独楽売」を見てきた。踊りの神様といわれた7世坂東三津五郎が得意とした長唄による舞踊。わたしにとって三津五郎といえば、ふぐで死んだ8世も馴染み深いが、振り返ってみて歴代三津五郎の「独楽売」を見た記憶は思い浮かばない。
 浅草歌舞伎で独楽売をつとめたのは、はつらつとした坂東巳之助(みのすけ)。やはり筋はなかなかよいと思った。いうまでもなく三津五郎の長男だ。これからも芸にいっそう精進し、父親のような味のある役者になって、いずれ三津五郎を継いでほしい。





 


 

雑誌や本が売れず、新聞もずいぶん部数が減っている。相変わらず活字ジャーナリズムの前途は明るくないが、けさの産経新聞によれば、文学全集や個人全集が続々と出版されているとか。久しぶりのあかるい話題にホッとした。

 記事によれば、平成23年に完結した河出書房新社の「世界文学全集」(全30巻)は合計で40万部を売り上げたそうだ。これは快挙といってよい。まだまだ日本の活字文化は健在だと思った。

 カネのなかった若い頃、なんとか節約して河出の世界文学全集を一冊、一冊買い増していった。そろえるのに、何年かかったか。実際に読んだのは、そのうちの23割にすぎなかったが、粗末な本棚に並んだ全集を眺めているだけで、心が豊かになるようだった。

 しかし、五、六〇代になって、だんだん全集から遠ざかっていった。活字が小さくて読めないのだ。あんな小さな活字を懸命に読んでいたのだから、若いときは視力も元気だったのだ。

 ベネズエラといえば、チャベス前大統領を思い出す。ワシントン・ポスト紙の付属誌「バレード」の特集記事「世界最悪の独裁者ランキング」で2005年、2006年、2007年に連続トップに選ばれた。

 その独裁者が死して35日で2年になるが、ベネズエラがピンチに立たされている。例の原油急落でアップアップなのだ。なにしろ、この国は輸出の95%を石油に依存しているのだから、たまらない。現大統領はチャベスほどの腕力はなく、ベネズエラの国民の間では独裁者を懐かしむ声があるとか。

 シリアへの渡航を計画していたフリーカメラマン(58)が、外務省から旅券返納を命じられた。要するに、危険な場所へ行くことはまかりならない、ということだ。ジャーナリストやカメラマンにとって、これはきつい。

旅券を返納させられたフリーカメラマンは、けさの朝日新聞によれば、「渡航と取材の自由はどうなるのか。突然のことで困惑している」と語ったという。

 かつてメディアの世界にいた人間としては、取材の自由といわれれば、とてもそれに異議申し立てをする勇気はない。

さりながら外務省の措置もわかる。やはりシリアへの渡航は危険が多すぎるのだ。

テレビを見ていて感じたことがある。殺害された後藤健二さんと親しかったという人たちがつぎつぎと登場し、後藤さんとの親密ぶりを語っていた。しかし、「後藤さんにシリア入りをやめるように強く忠告した」といった人は、わたしの見たかぎり、現地ガイド一人を除いてだれもいなかった。

そう思っていても、個人レベルでは言いにくいこともある。いうまでもないが、私的なアドバイスに強制力などまったくない。とすれば、外務省や警察庁といった公的機関の忠告というのは、とても貴重なように思える。





 


 

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