2014年01月

NHK会長になった籾井勝人(もみい・かつと)氏は、三井物産副社長や日本ユニシス社長をつとめてきたビジネスマン。メディアの流儀というものに慣れていなかったのか、メディアのペースに乗って話題を提供するハメになった。

 

うかつというか、生真面目すぎた。

 

メディアの世界に飛び込んだからには、メディアの手法と怖さについて事前に勉強しておくべきだった。

 

今回、ニュースとなった慰安婦などに関する発言は、なかなか勇気ある意見で賛同した人もすくなくないと思う。

 

「戦時中だからいいとか悪いとかいうつもりは毛頭ないが、この問題はどこにもあること」とか、どれもごく常識的な発言である。

 

 

半面、やっぱり籾井さんは商社マンだなあ、とも思う。ビジネスとメディアの世界のちがいに気づかず、まんまと罠にはまってしまった。

 

質問者から従軍慰安婦ということばが出たときの身構え方が正直すぎた。NHK会長と慰安婦問題。格好のとりあわせである。

 

大方のメディアは、爪の先くらいのことばでもニュースにしようと虎視眈々と狙っているのだから、こういうときはうまく肩すかしをくらわせたほうがよいのだ。たとえば、こんなふうに。

 

――慰安婦問題について、会長はどうお考えでしょうか。

「むつかしい問題ですね。勉強しておきます」

 

しかし、籾井さんはまっとうに答えた。そして批判された。

 

哀しいことに、メディア界の現在の風潮では、そういう手練手管が、NHK会長には必要である。

 

いわんや、「会長の職はさておき」なんて言い方はメディアの世界では通用しない。商社マンが商談で、「これは個人的な意見ですが」といったら、バカにされるのと同じこと。

 

籾井会長は、あわてて「発言を取り消します」といったそうだが、これまた、みっともない。

 

NHK側の会長へのレクチャーが足りなかった。「記者会見にオフレコはありませんから」と、きつく伝えておくべきだった。

 

もっとも、これで籾井さんはメディアの正体を見たと思う。恥じはかいたが、いい教訓になったはずだ。

 

〔フォトタイム〕

 

和田倉噴水公園その7

高層ビルとのコントラストもたのしめます。

 

 

 

中国国家安全部に身柄を拘束されていた東洋学園大学の朱建栄教授(56)が117日、釈放された。朱氏は昨年717日、日本から上海へ到着した直後、国家安全部に拘束された公算が強く、そうならちょうど6か月間、自由を束縛されたことになる。

 

国家安全部は、ひらたくいえば秘密警察のこと。どういう容疑で取り調べを受けたのか。さまざまの憶測が飛び交ったが、結局、「自分の活動に不適切なものはなかった」という朱氏の主張が認められたようだ。

 

それにしても拘束6か月は長すぎた。

 

大学で講座をもつ学者が授業を中断されたのである。朱氏や大学側、とりわけ朱氏の教え子たちにすれば迷惑この上ないことであり、とんでもない言いがかり、ということになる。

 

半面、なぜ6か月も留め置かれたのか、という疑問もある。国家安全部をナットクさせるのに6か月もかかったということは、言い換えれば、コトは単純な問題ではなかったことを示唆している。

 

朱氏はまだ上海に滞在しているという。帰国したとき、朱氏からどういう説明があるのか、注目したい。

 

〔フォトタイム〕

 

和田倉噴水公園その6

花もいっぱいある噴水公園です。

 

 

ジョージ・ソロス(投資家、慈善事業家)が、124日の「朝日新聞」でことしの世界経済の見通しを語っている。そのなかでソロスは、<現代世界が直面する大きな不安は、ユーロではなく、中国の将来の方向だ>と言い切る。

 

ソロスは中国をこう分析する。

 

<急速な台頭に寄与してきた成長モデルはもはや力を失った。輸出と投資に力を入れた結果、家計部門はいまやGDP35%に縮小し、その貯蓄は現行の成長モデルの財源として足りなくなった。様々な資金調達の急増は、(リーマン・ショックによる)2008年の暴落に先立つ数年間、米国に広がった金融状況と不気味に似ている>

 

ただ、ソロスによれば、米国と中国には重要なちがいがあるという。

 

<米国では金融市場が政治を支配しがちだが、中国では国家が銀行と経済の大部分を所有し、共産党が国有企業を管理する点だ>

 

これは影の銀行の破綻でささやかれている中国の金融危機の推移を予測するうえで、重要な視点である。

 

<危機に気づいた中国人民銀行(中央銀行)は12年から債務増加を抑えたが、経済への影響が表れると共産党が前に出た。137月、党指導部は鉄鋼業界に溶鉱炉の再稼働を指示し、人民銀行に金融緩和を命じた>

 

<構造改革よりも経済成長を優先した中国指導部の選択は正しかった。構造改革を財政緊縮とともに実施すれば、経済はデフレに陥って急落するからだ。しかし最近の政策には自己矛盾がある。溶鉱炉の再稼働は急速な債務増加に再び火をつける。こうした状況を23年以上続けることは不可能である>

 

構造改革よりも経済成長を優先した中国指導部の選択は正しかったというソロスの見方には異論もあろう。とはいえ、中国経済が中国共産党の力技をもってしても限界があるというソロスの予測に賛同するむきはすくなくあるまい。

 

<この矛盾を、いつ、どのようにして解決するかは中国と世界に重大な影響を及ぼすだろう。中国が首尾よくこの局面を抜けるためには、おそらく政治と経済の改革が必要となる。もし失敗すれば、いまも幅広い層が持っている中国の政治指導部への信頼が損なわれ、その結果、国内での抑圧と国外での軍事対立が生まれるかもしれない>

 

尖閣周辺の動きは、国外での軍事対立の予兆ともいえるが、いずれにしても大いに気になる中国の動向である。

 

〔フォトタイム〕

 

和田倉噴水公園その5

周辺の景観のよさはバツグンです。

 

 

昔、KCIAと聞いただけで身構えた時期があった。韓国中央情報部、その略称がKCIAだった。その後、安全企画部、略称安企部となり、現在は国家情報院という。

 

その国家情報院の前院長、ウォン・セフン(元世勲、62歳)が122日、ソウル中央地裁で実刑判決を言い渡された。懲役2年、追徴金約1590万円。その罪は、あっせん収賄だという。

 

韓国の国家情報院には、日本の内閣調査室など足元にも及ばない国内外の情報が入ってくる。情報は権力の源であり、したがって国家情報院のトップともなれば、強大な力をもつことになる。

 

それほどの地位にいる人物が建設業者から工事の許認可をめぐって関係機関への口利きを頼まれ、その謝礼として多額のワイロを受け取ったという。

 

こういうみみっちいことに、国家情報院のトップが手を出していたとはなさけない。ポストの重みからすれば、気恥ずかしくなるような事件だ。

 

ただ、この人物はとんでもないことをやった疑いもある。2012年の韓国大統領選挙で職権を利用して野党候補に不利になるような工作をしたというのだ。

 

国家情報院の職員らに命じて、大統領選挙に出馬した野党候補をおとしめるため、ネットに野党候補を中傷する書き込みをさせたという疑い。

 

こちらのほうも公職選挙法違反などで起訴され、いずれ判決が出ることになっている。情報機関のトップにおかしな人物を選ぶとたいへんなことになるという教訓をこめて紹介した。

 

〔フォトタイム〕

 

和田倉噴水公園その4

すぐ近くに丸の内のビジネス街が広がっています。

 

 

 

 

 

 

121日夜のNHK「クローズアップ現代」のテーマは、<仮想通貨vs国家 ビットコインの衝撃>だった。ネット上で生まれた新しい通貨、ビットコインは金融不安をきっかけにヨーロッパで広まった。

 

それがビットコインの利用者は、いまや全世界で数百万人。市場規模は1兆円といわれる。需要が高まったため、価格は上昇。そこに世界の投資マネーが流れ込み、1ビットコインは10万円を突破。わずか1年で100倍以上になったという。

 

キプロスの市民が、「信頼できない中央銀行から解放してくれるのがビットコインなんだ」と語っていた。誕生からわずか5年で80か国以上に拡大した。

 

国境を越えたすばやい送金ができるのもビットコインの魅力。たとえば日本からアメリカへ送金するとき、通常は双方の銀行の仲介が必要だ。しかし、ビットコインはインターネットで個人同士が直接取引ができるため、手数料は不要。

 

株のように投資対象ともなっているが、国や中央銀行の支えはない。ビットコインは世紀の大発明か、それとも……ビットコインの恍惚と不安の行く末に注目していきたい。

 

〔フォトタイム〕

 

和田倉噴水公園その3

天皇家の慶事を記念してつくられた公園は、近くのオフィスに勤務するサラリーマンの憩いの場でもあります。

 

 

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