2013年11月

中国が防空識別圏を設けた理由の一つは、アメリカの無人偵察機グローバルホークへの牽制ではないか、という見方がある。

 

ふつう軍用無人機は攻撃能力をもつ。しかし、グローバルホークはいってみれば素手。もっぱら情報収集が目的である。

 

それでも中国がグローバルホークを警戒するのは、その高度。18000㍍の高さまで飛ぶことができる。

 

地上でも上に上がるほど、遠くが見える。無人偵察機も同じで、高度が上昇するにつれて、見える範囲も広がってくる。相手も見えにくいのでバレない。

 

これでは、中国の内陸部が丸見えになってしまうのではないかと、中国は恐れているのだ。

 

それにしても軍用無人機の技術革新はすさまじい。

 

グローバルホークを苦々しく思っている中国だって、けっこう軍用無人機研究に熱心で実際に多数保有している。

 

どの国も、パイロットの命を大切にしたいと思っている。

 

ひょっとしたら、そう遠くない将来、空軍の主力は無人機になるかもしれない。

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その6

隅田川は、人々の心をなごませてくれます。

 

 

 

 

初の女性首相ではなく、初の女性首相秘書官がニュースになるのが日本。女性のトップが当たり前の国際社会から見れば、ずいぶん遅れているが、それでも安倍晋三首相の初の女性首相秘書官起用を歓迎したい。

 

「これまでは男性ばかりでしたから……」と安倍さんが述べていた。首相秘書官はハードなうえ、省庁のエリートが選抜されるので、ずっと男性優位になっていた。

 

ケネディ駐日大使が予想通り、メディアの関心を集めている。ケネディ大使の発信力はあなどれない。

 

ジョン・F・ケネディの長女ということもあるが、女性大使としての注目度も無視できないのである。

 

それは初の女性首相秘書官にも通じるはずだ。

 

ときには女性首相秘書官もメディアの前面に登場して、官房長官とはちがった視点で官邸の情報を発信したらよい。

 

安倍さんが初の女性首相秘書官に選んだのは、経済産業省大臣官房審議官の山田真貴子さん(53)。広報とか、女性政策などを担当するという。

 

安倍さんの代弁をするのが役目なら、遠慮なくメディアの場を大いに利用してほしい。

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その5

隅田川テラスは、広々として快適な遊歩道となっています。

 

 

出生直後にべつの新生児と取りちがえられた男性(60)の記者会見をテレビで見た。顔は画面に出てこないので表情はわからないが、おだやかな話しぶりから、男性のまじめな人間性はよくわかった。

 

裕福な両親の長男として生まれたのに、産院のミスで男性は中卒で就職しなければならなかった。

 

記者会見で印象的だったのは、育ててくれた母親への感謝の念だった。このときは、たとえ貧しくとも家庭の暖かさが感じられて、「氏(うじ)より育ち」ということわざの真理を再認識した。

 

とはいえ、大学へ行きたかった男性にすれば、大卒と中卒の差はあまりにも大きい。「学歴がすべてではない」と気休めのようなことをいう人もいるが、そういうことを口にするのはおおむね大卒の人間である。

 

男性のじつの弟たち3人は、「まだ人生は20年も残っている。取り戻しましょう」といったという。このことばも、重苦しい事件にいくらかのあかるさをもたらしてくれた。

 

男の兄弟4人が、離れ離れになっていた長兄を囲んでこれから絆をたしかめあう。

 

「血は水よりも濃い」(人の性質は環境よりも血統で決まる)ということわざもまた真理なのだ。

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その4

駒形堂は1400年前、浅草寺の本尊が初めて祀られたところに建つお堂です。

 

 

中国共産党政権は、なぜ尖閣諸島をふくむ防空識別圏を唐突に設定したのか。いくつかの理由があるはずだ。その一つ一つを検証し、中国防空識別圏設定の狙いに対するそれぞれの対策を立てる必要がある。 

 

中国の狙いの一つは、アメリカ空軍の出方を試すことにあると思う。

 

中国は自国の情報網を総動員して、日米安保の成り行きをシュミレーションしている。かんたんにいえば、中国はアメリカが本当に日本を助けるかどうか、はっきりしたところを見極めたいということだ。

 

どんなに日米間に安保という強固な絆があっても、「最終的には、日本より中国が大切とアメリカは思うはず」と、中国は思っている。

 

26日あさ、アメリカの爆撃機が2機、中国が求める飛行計画を無視して、中国が定めた防空識別圏を飛行した。

 

これまでの中国側の一方的な通告では、指示に従わない航空機に対して緊急措置をとると息巻いていた。

 

しかし、26日あさ、アメリカの爆撃機に対する中国側のアクションはなかった。

 

これをどう解釈するか。まだ結論を出すのは早いが、これから注目したいのは中国の世論の動向である。

 

あきらかに習近平政権は、世論を煽っている。

 

もっとも北京政府にとって、「防空圏に侵入したアメリカの爆撃機を撃ち落せ!」という中国民衆のナショナリズムの雄叫びは両刃の剣でもある。

 

それはわかっていても、中国民衆が抱くもろもろの不満を発散させようと、中国は危険な綱渡りを始めようとしている。

 

とりわけ習近平政権の強硬派が望んでいるのは、日本の航空自衛隊を巻き込むことだ。日本のほうが、アメリカより中国民衆の怒りを増幅させるからである。

 

だから航空自衛隊は決して挑発に乗ってはいけない。しかし、ときと場合によっては、毅然とした態度と行動は見せなければなるまい。

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その3

駒形橋は、橋のたもとにある浅草寺の駒形堂に由来します。

 

 

神保町の岩波ホールで映画「ハンナ・アーレント」を観てきた。アーレントは、「全体主義の起原」の著書で知られるドイツ・ユダヤ系の著名な女性哲学者。ナチスの迫害に遇い、収容所に入れられたが、脱走し、アメリカに亡命。戦後はニューヨークで暮らした。

 

映画は、アーレントがアイヒマン裁判を傍聴して書いたリポートが、ユダヤ人社会を揺るがす大騒動を巻き起こした1960年前後が中心。ユダヤとナチスという重いテーマゆえ、こちらもいくぶん身構えて岩波ホールへ出掛けた。

 

それがハイデガーとの色恋など息抜きも随所にあって、思っていた以上に娯楽性があり、あっという間の1時間54分であった。

 

もちろん、いろいろ考えさせられたが、映画以外でも興味深い現象を客席で観察した。

 

上映中、咳き込む人が何人もいたのである。断続的ではあるが、かなりの人がゴホン、ゴホンと咳をしていた。カゼが流行っていた時期でも、こういう情景に遭遇した記憶はない。

 

理由は、すぐにわかった。

 

映画の登場人物は、どの人もやたらにタバコを喫うのである。とくにヒロインのアーレントはヘビースモーカーだった。

 

実際、アーレントは典型的なチェーンスモーカーだった。

 

とにかくタバコの煙がもうもうとスクリーンにたちこめ、これが嫌煙の人や、煙に敏感な人たちに反応したのだ。

 

女性監督のマルガレーテ・フォン・トロッタはベルリン生まれで、もともとは女優だった。1986年に公開された「ローザ・ルクセンブルク」ではヒロインを演じ、カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞している。

 

トロッタ監督は、タバコの煙に意味をもたせている。煙それ自体がアーレントの思索を暗示する重要なシーンとなっているのだが、煙アレルギーの観客にはつらかったと思う。

 

 

〔フォトタイム〕

 

駒形橋その2

昔は、駒形の渡しがあったところです。屋形船が浮かんでいました。

 

 

 

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