米国に皇族・王族は建国以来、ひとりとして存在しないのだから、「米国のロイヤル・ファミリー」という言い方は、本来、あり得ない。
しかしながら、それらしきものが存在しているのもまた事実。代表格はケネディ一族だが、米国にロイヤル・ファミリーもどきを根づかせたのがメディアであるのはいうまでもない。
そして、その背後に噂好きの米国大衆がうごめいている。ロイヤル・ファミリーは、ホンモノもモドキも古今東西、宿命的に噂好きの民衆と共にあるのだ。
当節の米国でクリントン家のひとり娘の結婚式が話題になっているのも、メディア戦略に沿ったもの。このところ、様になるロイヤル・ファミリーもどきの人材不足に陥っていた米メディア界にとっては、久々のビッグ・イベントであったようだ。
クリントン家のひとり娘、チェルシーさんは、現在30歳。12歳から20歳までホワイトハウスで過ごしたが、その間、父親の不倫騒動があった。両親の間に激しい葛藤があった時期。それは娘にとっても、たいへんな試練の日々であったと思う。
あのとき、共に強い性格の持ち主であるクリントン氏(63)とヒラリー女史(62)が離婚を思いとどまったのは、チェルシーさんがいたから、といわれている。それがすべてではないであろうが、この夫婦にとって娘の存在感が大きかったのは、たしかであろう。
チェルシーさんの結婚相手は、スタンフォード大学で同級生だった投資銀行マン(32)。かれの両親は双方ともに下院議員であった。
ヒラリ―米国務長官は、7月3日、訪問先のポーランドで、「いまのわたしの人生で、娘の結婚より大事なことは何もない」と米メディアにこう明かしたという(「朝日新聞」7月25日付朝刊)
正真正銘のロイヤル・ファミリーは、ノブレス・オブリージ(高貴なるものの義務)をわきまえているので、決して、こういう誤解をうむようなことは口にしない。
貴族的なところは微塵もない、率直で、いかにもヒラリー女史らしいことばといえよう。
〔フォトタイム〕
新国立劇場その6
この界隈には学校があって、若者たちの姿が多く見られました。