昨晩のNHK「クローズアップ現代――脱北者vs北朝鮮 情報戦の舞台裏」は勉強になった。ご覧になった方も多いと思うが、すこしふれてみたい。
北朝鮮ではデノミによる混乱が伝えられているが、この情報を韓国政府より早くキャッチしたのは、脱北者団体のNK知識人連帯であった。
番組によれば、ソウルでNK知識人連帯が設立されたのは2年前。北朝鮮の大学などで高等教育をうけた人たちを中心に250人が所属。北朝鮮に残った家族などの人脈を使って、当局が対外的に発表しない情報をリアルタイムで収集しているという。
北朝鮮の協力者からNK知識人連帯にデノミにかんする第一報が入ったのは、昨年11月30日という。その速報性においては、どの情報機関もメディアも足元にも及ばなかった。
かれらの情報収集の武器は、携帯電話である。
1400㌔におよぶ中朝国境地帯で、中国側はいくつかの携帯電話の電波塔を建設している。この中国の電波塔から国際回線を通じ、北朝鮮の一部地域でかけた携帯は500㌔離れたソウルにつながる。そこでNK知識人連帯は、国境付近にいる北の協力者に携帯電話を送り込んでいるのだ。
北へ渡っているのは、大容量の通信が可能な第三世代と呼ばれる携帯電話。音声以外にも文字情報や映像を送ることができる。
携帯が届かないところからも情報は入る仕組みになっている。北朝鮮の隅々から携帯がソウルとつながる中継点へ有線電話で情報が入り、それがソウルへ送られるのだ。
ここでもっとも注目すべきことは、韓国から北朝鮮国内へ携帯がひそかに入っているという事実だ。韓国と通話したことが北の当局にわかれば、命の保証はない。
NK知識人連帯のキム・フンガン代表が、「北朝鮮は閉ざされた鉄の城壁です。しかし、ITの発達がその壁に風穴をあけたのです」と語っていたが、これは誇張でもなんでもないと思う。
番組の一部を紹介しよう。
――依頼した情報は手に入りましたか?(ソウル)
「はい。読みあげます」(北朝鮮)
ナレーション、「協力者が読み上げたのは、デノミについで実施された外貨取引の禁止命令です。<いかなる政府機関、企業においても外貨を流通させる行為は許さない>
これも団体が逸早く察知しました」
――処刑について書いていませんか?(ソウル)
「ありました。第5条です。<外貨取引をした者や、それを黙認した者は、財産を没収し、悪質な場合には、死刑に処す>と」(北朝鮮)
――ご苦労さまでした。いま監視網がつくられています。いちばん身近な人が密告するかもしれない。スパイに注意して下さい(ソウル)
東ドイツでもそうだったが、友人や家族に密告された人たちが意外に多いので、「いちばん身近な人が密告するかもしれない」という忠告は、的を得たものといえよう。そういえば、密告者が妻という例もあった。
〔フォトタイム〕
カルティエ南青山店その3
あたり一帯には、有名ブランド店が軒を並べています。