2010年03月

昨晩のNHK「クローズアップ現代――脱北者vs北朝鮮 情報戦の舞台裏」は勉強になった。ご覧になった方も多いと思うが、すこしふれてみたい。

 

北朝鮮ではデノミによる混乱が伝えられているが、この情報を韓国政府より早くキャッチしたのは、脱北者団体のNK知識人連帯であった。

 

番組によれば、ソウルでNK知識人連帯が設立されたのは2年前。北朝鮮の大学などで高等教育をうけた人たちを中心に250人が所属。北朝鮮に残った家族などの人脈を使って、当局が対外的に発表しない情報をリアルタイムで収集しているという。

 

北朝鮮の協力者からNK知識人連帯にデノミにかんする第一報が入ったのは、昨年1130日という。その速報性においては、どの情報機関もメディアも足元にも及ばなかった。

 

かれらの情報収集の武器は、携帯電話である。

 

1400㌔におよぶ中朝国境地帯で、中国側はいくつかの携帯電話の電波塔を建設している。この中国の電波塔から国際回線を通じ、北朝鮮の一部地域でかけた携帯は500㌔離れたソウルにつながる。そこでNK知識人連帯は、国境付近にいる北の協力者に携帯電話を送り込んでいるのだ。

 

北へ渡っているのは、大容量の通信が可能な第三世代と呼ばれる携帯電話。音声以外にも文字情報や映像を送ることができる。

 

携帯が届かないところからも情報は入る仕組みになっている。北朝鮮の隅々から携帯がソウルとつながる中継点へ有線電話で情報が入り、それがソウルへ送られるのだ。

 

ここでもっとも注目すべきことは、韓国から北朝鮮国内へ携帯がひそかに入っているという事実だ。韓国と通話したことが北の当局にわかれば、命の保証はない。

 

NK知識人連帯のキム・フンガン代表が、「北朝鮮は閉ざされた鉄の城壁です。しかし、ITの発達がその壁に風穴をあけたのです」と語っていたが、これは誇張でもなんでもないと思う。

 

脱北者団体の情報には、バイアスがかかっていることもあるので、その点は留意する必要はあるが、北朝鮮の庶民のナマの声はやはり貴重だ。

 

番組の一部を紹介しよう。

 

――依頼した情報は手に入りましたか?(ソウル)

「はい。読みあげます」(北朝鮮)

ナレーション、「協力者が読み上げたのは、デノミについで実施された外貨取引の禁止命令です。<いかなる政府機関、企業においても外貨を流通させる行為は許さない>

これも団体が逸早く察知しました」

 

――処刑について書いていませんか?(ソウル)

「ありました。第5条です。<外貨取引をした者や、それを黙認した者は、財産を没収し、悪質な場合には、死刑に処す>と」(北朝鮮)

――ご苦労さまでした。いま監視網がつくられています。いちばん身近な人が密告するかもしれない。スパイに注意して下さい(ソウル)

 

東ドイツでもそうだったが、友人や家族に密告された人たちが意外に多いので、「いちばん身近な人が密告するかもしれない」という忠告は、的を得たものといえよう。そういえば、密告者が妻という例もあった。

 

〔フォトタイム〕

 

カルティエ南青山店その3

あたり一帯には、有名ブランド店が軒を並べています。

 

 

 

40年前の昭和451970)年331日、赤軍派による日航機「よど号」乗っ取り事件が起きた。羽田発福岡行きの「よど号」に乗り合わせた乗客のなかに、聖路加国際病院の日野原重明理事長(98)がいた(当時、日野原さんは同病院の内科医長だった)。

 

けさの産経新聞に当時を振り返った日野原さんの一文が掲載されている(寄稿の要旨)。機内の様子を伝える貴重な証言であり、その一部を抜粋してみたい。

 

<ハイジャック3日目に機内放送があり、山村新治郎代議士が乗客の身代わりになって赤軍とともに北朝鮮へ出発することが伝えられた。乗客のひとりがハイジャックとはどういう意味かと質問したが、田宮(高麿)代表も答えられなかったので、わたしがマイクをもらって、「ハイジャックする人が説明できないのはおかしい」といったところ、一同は大笑いして、座が急に明るくなった>

 

<生きるも死ぬも皆が同じ運命にあるという意識から生じたストックホルム症候群という敵味方の一体感に一同が酔ったといえるかもしれない>

 

<赤軍一同が革命歌「インターナショナル」を歌うと、乗客のひとりが別れの歌「北帰行」を高らかに吟じ、学生時代に左翼運動に参加したと思われる乗客たちが手拍子をとって一緒に歌ったりもした>

 

「よど号」の乗客たちは、ハイジャックから4日目のあさに解放されたが、日野原さんは、「金浦空港(韓国)の土を踏んだときの靴底の感覚をわたしはいまでも忘れることができない」と述べている。

 

誘拐事件などでもみられるストックホルム症候群は、経験したことはなくとも、その心理状況は容易に理解できる。極限状態においては、加害者と被害者の感情が微妙に交わることもあり、それがときには部外者から誤解の目でみられることもある。

 

渦中の心理状況は、そう単純ではないのだ。

 

現在、北朝鮮に残る赤軍メンバーはすでに60代。北朝鮮での40年間の生活は、なんだったのだろう。

 

〔フォトタイム〕

 

カルティエ南青山店その2

地下鉄の表参道駅のすぐちかくです。

 

 

組織に属していて、なにがいちばん辛いだろうか。いろいろあるが、上司から「それは聞いていない」といわれたときは、かなり応えるにちがいない。さいわい、そういう経験は一度もなかったが、見聞する機会はあった。

 

小さな組織でも、「いった」「いわない」、「了解を得た」「了解していない」、「申した」「聞いていない」といった口論は、のちのちまで尾を引くし、業務にすくなからず影響する。

 

とりわけ社運がかかるような事案で、経営陣の見解の相違が表面化しては一大事。内部で十分に論議したうえで、会社の方針はつねに統一しておくのが、常識である。

 

郵政事業の見直し案をめぐる鳩山内閣の混乱ぶりは常軌を逸している。日本でもっとも重要な組織といえる内閣で、「いった」「いわない」、「了解を得た」「了解していない」といった、子どものケンカのような口論が表沙汰になるだけでもスキャンダルである。

 

スキャンダルというと、まず異性問題の醜聞が思い浮かぶ。しかし、こういうばかばかしい閣内不一致もれっきとしたスキャンダルといってよい。

 

いずれにしても、大臣同士が、テレビなどでも言い争っている姿は、信じがたい。常識を忘れた政治家たちが、いま国の命運を握っている。ほんとに大丈夫かな、と思うときがある。

 

〔フォトタイム〕

 

カルティエ南青山店その1

青山へ行ったとき、有名なブランド店を撮ってきました。

 

 

島に住む女性がなかなか強いことで知られる韓国の済州島が、医療観光の一大拠点になるべく、準備がすすめられているというのは、初耳だった。

 

昨夕の日本経済新聞の「社会保障ウオッチ」という欄に、<注目される韓国の「医療観光」>という記事があった。

 

高度な医療設備を整え、外国から富裕層を呼び込もうという試みは、インドなどですでに実施されている。自分の命を救うためには、この世に金に糸目をつけない人たちはゴマンといるので、医療観光(メディカルツーリズム)は、世界的に注目され、わが国でも観光振興策の検討課題のひとつになっている。

 

日経記事によれば、<韓国の済州島を北東アジアにおける観光や健康の一大拠点にすべく、大規模な開発がすすみつつある。その目玉のひとつが高度な医療や検査ができる医療機関を設立し、海外から療養や保養に来る人を集める構想。このために大胆な規制緩和も実施する>とか。

 

注目したいのは、済州島の自治政府へ大きな裁量権を与える点。たとえば、株式会社の営利病院の設立を認めるとか、外国語表記の診断書も可能にするとか、いくつかの規制の見直しをすすめる。このようにして済州島に、先進的な検診センターや医療機関を誘致し、最終的には医療関連研究機関もあつめて、2015年ごろの完成をめざすという。

 

ただ、病院の規制緩和には、難点もある。富裕層を対象とした病院は、当然、医師の報酬も高くなるので、優秀な医師を吸い寄せてしまう。あるいは、いまでも大都市と地方の医療格差が問題なのに、さらに格差を広げてしまうであろう。

 

ただ、いろいろ問題はあるにしても、医療観光そのものを完全否定してはいけないと思う。医療を産業としてとらえた場合、医療観光の将来性は、無視できない。そういう意味では、済州島に一歩先んじられたという感じであるが、まあ急ぐこともあるまい。いずれにしても、済州島の医療観光の成り行きに注目していきたい。

 

〔フォトタイム〕

 

深川不動堂その7

裏手に「成田山」の看板がある大きな門がありました。

 

 

阪神に移った城島は、ずっとフォローしてきた、気になる選手のひとりだ。きのうは、猛打賞の大活躍。日本に戻ってきて、ほんとうによかった。

 

プロ野球がはじまると、もう本格的な春という感じ。そこできょうは、野球にちなむ話題をひとつ。

 

新潮社が発行する小冊子「波」3月号に、江夏豊さんの「わたしが選ぶ最高の9人」という文章が載っている。江夏豊/構成・波多野勝『左腕の誇り 江夏豊自伝』(新潮文庫)のあとがきをもとに、「波」編集部で再構成したものだという。

 

現在、活躍している選手ははずして、「一緒にプレーして、その技術も人間性も肌でわかっている人から選びたい」と江夏さん。以下、この文章からベスト9をピックアップしてみた。

 

「まず、王(貞治)さん、長嶋(茂雄)さんのファースト、サードというには、はずすことができないでしょう」

 

「セカンドは高木守道さんでしょう。守備もバッティングも堅実で、つねに投げている、走っている、バットをもっている。野球人としてすばらしかった」

 

「ショートにはすばらしい選手が多いですが、やはりわたしにとっては藤田平です」

 

「外野手は、まず張本勲さん。日本球界だけでの3000本安打という記録は、かれしか達成していないし…それに走攻守すべてにバランスのよかった山本浩二、若松勉。外野はこの3人ではないでしょうか」

 

「そしてピッチャー、左腕は鈴木啓示。この人は数字が物語っています(通算317勝)…右は山田久志。かれらとやってきたっていうのは、自分の野球人生の誇りです」

 

「さいごにキャッチャー。ふつうにいえば、野村克也さんでしょうが、わたしの場合は、田淵幸一。やっぱり、この男が日本の野球を変えてしまったと思います」

 

江夏さんがプロの目で選んだラインアップ。なるほどと思った。ファンでも、人それぞれに思い思いの選び方があろう。そこには、選ぶ側の思い出が濃密に反映されてくるはずだ。

 

〔フォトタイム〕

 

深川不動堂その6

ご覧のように、ぬいぐるみのワンちゃんが参拝客をみつめていました。

 

 

 

 

↑このページのトップヘ