2010年02月

NHKアーカイブスの、そのまた録画で、永平寺で修行する雲水たちを追ったドキュメンタリーをみた。2度目にもかかわらず、新鮮で感動的だった。真面目な若者たちの、一途な姿というのは、じつに清々しい。

 

200人を超える永平寺の雲水のなかに、坐禅や読経をほとんどおこなわない者がいる。せっかく大本山に居ながら、禅宗の基本中の基本であるはずの坐禅もしない修行僧というのは、どういう存在なのか。

 

永平寺では、台所を大庫院(だいくいん)というが、ここで働く雲水は9人。かれらは、深夜2時半には200人を超える永平寺で修行する僧の食事の用意にとりかかる。

 

家庭で料理などつくったこともない若者たちが、先輩に教わりながら、毎日、夜明け前から料理づくりに専念するのだ。かれらの感想を聞いてみよう。

 

「かなり、たいへんです。料理に追われて休む暇もない状態です」

「やはり人間ですので、ときにはゆっくり寝たいな、と思います」

「慣れてきますと、面白いというのは変ですけれど、料理をつくるのは、毎日毎日、味がちがってくるので、そういうところに面白さがあります」

 

9人の料理番雲水を率いるのが、「典座(てんぞ)」といわれるベテラン僧。道元は、厨房を指揮する典座を禅寺のなかで最も重い役割と考えた。道元によれば、典座は悟りを求める深い心がなければつとまらないという。

 

中村勘太郎が道元を演じた映画「禅 ZEN」に、留学先の宋で道元が年老いた典座と出会う重要な場面がある。「食事づくりなど、だれにでもできる仕事ではないか」という道元を、典座は「あなたは修行のなんたるかを知らない」と笑い飛ばした。

 

坐禅や読経が修行だと思っていた道元は、このひとことに衝撃をうけ、これを契機に食事づくりを重要視していった。

 

あすからはじまる3月は、異動の季節。不本意な職場にまわされる場合もあろう。しかし、そこでくさるよりは、いま自分のいるところが最も重い役割と考えたほうがよい。懸命に努力し、仕事の喜びややりがいを早く会得したほうが、人生も充実してくる。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その7

建築家の隈研吾さんが設計を担当する、5代目のあたらしい歌舞伎座は、平成252013)年春に完成の予定です。

 

 

ふたたび三島由紀夫対談集『尚武のこころ』(日本教文社)から拾ってみたい。小汀利得(おばま・としえ、評論家)氏との対談「天に代わりて」(「言論人」)のなかで、テレビの偏向にかんして三島さんがつぎのように語っていた。

 

「テレビの場合、ぼくらは、じつにニュース取材というのは、困るんです。うっかり映像をだすと、映像にウソはつけない、わたしがカメラの前に立つ、なにかしゃべる、なにかをやる、それをフィルムではどうにでもなるということですね>

 

<しまいにちょっとしたコメンタリィをつけて、「……と三島は意気揚々、過激な言論を吐いて高笑いをしていた」なんていわれたら、これはもうマンガになっちゃう」(笑い)>

 

このあとに三島さんは、「マンガにされるのも悲劇にされるのも、みんな向こう様の自由」と述べていたが、この対談から40年後に、自民党のある政治家から似たようなことばを聞いたことがある。

 

その政治家がいうには、テレビでどんなにわかりやすく自説を展開しても、すぐあとで司会者にひとこと皮肉られてしまうと、もう自分の意見などけし飛んでしまう、というのだ。結局、視聴者に印象づけられるのは、皮肉だけ、というわけで、これでは愚痴もでよう。

 

三島さんがいうように、みんな向こう様の自由、というのは極論にしても、いまもなお歯がゆい思いをしている人たちがいるのは、たしかにちがいない。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その6

昭和通りに面した左手から、歌舞伎役者らは楽屋入りします。

 

 

自分の家の本棚を眺めていて、目次に「226将校」とあった本をとりだした。74年前のきょう、226事件が起きた。三島由紀夫対談集『尚武のこころ』(日本教文社)で、奥付をみたら昭和45年の発行。そういえば、三島事件は、この年の1125日だった。

 

三島さんの対談の相手は、10人。三島さんとそれぞれのゲストの対談が最初に掲載された雑誌は、「言論人」、「勝利」、「プレイボーイ」、「潮」、「月刊ペン」、「流動」、「財界」、「宝石」、「日本読書新聞」などバラエテイーにとむ。三島さんは、あまりメディアを選り好みしなかったようだ。

 

懐かしい名前もあるので、テーマなども書き出してみよう(ゲストの肩書きはこの本にあるもの)

 

小汀利得(おばま・としえ、評論家)、「天に代わりて」(「言論人」)

中山正敏(日本空手協会首席師範)、「サムライ」(「勝利」)

鶴田浩二(俳優)、「刺客と組長」(「プレイボーイ」)

高橋和巳(作家・京大助教授)、「大いなる過渡期の論理」(「潮」)

石原慎太郎(作家・参議院議員)、「守るべきものの価値」(「月刊ペン」

林房雄(作家)、「現代における右翼と左翼」(「流動」

堤清二(西武百貨店社長)、「226将校と全学連学生との断絶」(「財界」

野坂昭如(作家)、「剣か花か」(「宝石」

村上一郎(評論家)、「尚武の心と憤怒の叙情」(「日本読書新聞」

寺山修司(詩人)、「エロスは抵抗の拠点になり得るか」(「潮」

 

このなかの堤さんとの対談「226将校と全学連学生との断絶」を読みはじめたら、冒頭で三島さんが、こんな大蔵省時代の話をしていた。

 

<わたしが学校をでて大蔵省につとめたときですが、麻雀や酒など夜のおつきあいは全部振りきって、まっすぐ家に帰ってたんです>

 

<ところが小説を書いていると夜中の1時、2時でしょう。あさ6時に起きて役所に行くものですから、寝不足でフラフラしている。あのころはゼロックスなんかないから、「おまえ主計局へ行って予算書を写してこい」なんていわれるでしょう。6983をまちがったり、あの年の国家予算は、わたしのおかげでだいぶ狂っているんです(笑い)>

 

<そんなことである雨の日のあさ、渋谷駅ですべって、ホームと電車のすき間に体半分くらい落ちてしまった。やっぱり寝不足でフラフラしているからだというんで、それまで文学に反対していたオヤジもさすがに折れましてね。役所をやめるのを賛成してくれました。だから8か月ですよ、大蔵省は>

 

この対談で、三島さんは、「ぼくは書く前のウォーム・アップの時間が長いんです。だいたい6時間座っていると、はじめの3時間くらいはぜんぜん書けないんです」と語っていた。文章の達人にしてそうなのかと、すこし安心した。

 

なお、三島さんは、文章が書けないときは、「少年マガジン」などを読んでいたという。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その5

これは、いってみれば、歌舞伎座の“横顔”です。

 

 

中国といえば、豊かな沿海部、貧しい内陸部というのが一般的な見方だ。マクロでみれば、たしかにそうで、その格差は広がる一方のようにも思える。ただ、地域によっては、こういう図式はもう古い。中国の元気の秘密というのは、内陸部のバイタリティーのおかげともいえるようになってきたのだ。

 

日本経済新聞(14日付朝刊)に2009年中国地方政府(31省・直轄都市・自治区)の実質GDP(域内総生産)成長率ランキングが載っていた。なんとトップは前年比17%増の内モンゴル自治区だった。参考までに成長率ベスト10と前年比を紹介しよう。

 

1、内モンゴル自治区 17

2、天津市 165

3、重慶市 149

4、四川省 145

5、広西チワン族自治区 139

6、湖南省 136

7、陝西省 136

8、吉林省 133

9、湖北省 132

10、遼寧省 145

 

ちなみに沿海部の代表格である上海市は82%だった。きのう、ふれたように、昨年の中国の経済成長率は87%だから、上海はそれを下回った。このように中国の驚異的な経済成長率は、意外にも内陸部や東北部によって支えられているのだ。

 

もちろん、経済規模はまだ沿海部にはとても及ばないが、これら地方の活気は中国全体の上昇気運に大きな影響を与えている。

 

先年、はじめてチベット自治区を訪れ、その発展ぶりに驚いた。半面、漢民族の巨額の資本投下の陰で固有のチベット文化が失われていくのではないか、という感じもした。

 

いずれにしても、中国内陸部や東北部の経済成長をもたらした最大の要因が、公共事業であるのはいうまでもない。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その4

1月、市川團十郎さんの弁慶をみにいってきました。

 

 

いつしか日本では、公共事業とか公共投資というと、禁句というか、時代遅れのような雰囲気になってしまった。公共事業イコール、コンクリートと連想されることもあって、まことに肩身が狭い。

 

なにかの集まりで、「ええ、公共事業はですね」といった途端、極端にいえば、部屋の空気が凍りついてしまうような感じだ。

 

古代エジプトのピラミッドは、農閑期の人々に仕事を与えるための公共事業であったという見方がある。ピラミッド建設にかんして、大量の奴隷が動員された、血も涙もない物語という説は、いまではあまり説得力がない。

 

万里の長城も案外、公共事業であったのかもしれない。もっとも、そういう史料が残っているわけではないので、これは単なる想像にすぎないが…。

 

中国の経済成長を支えているのは、いまや日本では四面楚歌の公共事業。昨年、中国の経済成長率は87%で、2009年の輸出額はついにドイツを抜いて世界の首位になった。

 

前年比でみれば、じつは中国の輸出は20%も減少している。にもかかわらず、これだけ高い成長率を達成できたのは、公共事業と内需のおかげである。

 

とくに景気対策として、どーんと4兆元(60兆円)も投じたのが大きかった。交通インフラ・水利などに15兆元、四川大地震復興に1兆元、低所得層向け住宅建設に04兆元etc.

 

高速鉄道網の普及も見逃せない。昨年暮れ、開業にこぎつけた広東省の広州と湖北省の武漢を結ぶ1069㌔の新路線は、約3時間だという。時速350㌔は、世界最高である。

 

昨年、中国では新車が1350万台も売れた。2010年は、1700万台に達するのではないか、とみられている。

 

かくして、経済大国日本は、2位の座を中国に譲ることになる。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その3

歌舞伎座の創業は明治元(1868)年ですが、建物は4回、建て替えられました。現在の建物は、昭和251950)年に建てられました。

 

 

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