2009年10月

テレビで衆参両院の代表質問のやりとりをみていて、いくつか感じたことがある。そのなかのひとつをいえば、どの閣僚と名指しは控えるが、とにかく雄弁な人がいたこと。

 

ある人などは、演説会と勘違いしているのではないかと思うほどで、自分のことばに酔っているふうでもあった。また、ある人は、これまでとは変わったところをみせようと、いかにも自分のことばでしゃべっているふうを装って、まるで講釈師のように気取っていた。

 

はは~ん、テレビだな。議場の背後に広がる世間を意識しての、パフォーマンス。あまりの多弁に、議長から注意されていたが、そのとき浮かんだのは、「巧言(こうげん)令色すくなし仁(じん)」ということわざ。

 

<おしゃべりの割に中身がない>という感想に、このことわざが合っているかどうか、それはわからない。たしか出典は論語のはず。そこまでは覚えているが、ことわざの意味となると、もう自信がない。昔、苦労して覚えたことをどんどん忘れていく。なにか財産をうしなうようで、切ないが、致し方ない。

 

ただ、こういうときは、疑問のままにしないで、なるべく労を厭わず、まめに調べることにしたい。と、自分に言い聞かせて、『故事ことわざの辞典』(小学館)をひらいた。

 

令色(れいしょく)とは、顔色をよくすること、表面をとりつくろうこと。全体の意味は、「ことば巧みで、人に気に入られようと表情をとりつくろっている者には、儒教の理想の道徳である仁が欠けている」ことだという。

 

う~ん、やはりちょっと、ニュアンスがちがうのだ。もっとも、「ことば巧みで、人に気に入られよう」としているところは、そのとおりかもしれないが。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その6

地上2階、地下1階の延べ床面積は、約4000平方㍍で、いままでの2倍になりました。

 

 

鳩山由紀夫首相は、「友愛」のほかにも、いろいろと“殺し文句”を繰り出して、高い支持率を維持するうえで効果を発揮している。なかでも、「あなた方にいわれる筋合いはない」、「こうなったのは、だれの責任ですか」といった切り返しの反論にはなかなかパンチがあった。鳩山首相からこう反撃されると、追及する側の自民党もタジタジだ。

 

ただ、いかんせん、殺し文句にも“賞味期限”がある。この必殺パンチも、どう甘くみても、あとひと月が、ぎりぎりの許容範囲だろう。

 

師走になっても、まだ、「あなた方にいわれる筋合いはない」なんて答弁を繰り返していたら、「ふん、なにを寝ぼけているんだ。この野党ボケ」と、失笑をかうはず。

 

それに、政府側が、「あなた方にいわれる筋合いはない」というと、前へ議論がすすまない。本来、政権与党が連発するようなことばではないのだ。

 

いずれにしても、鳩山政権のハネムーンの前半は終わった。後半に入って、メディアもきびしくなるだろうし、東京地検の捜査が、それに拍車をかけるかもしれない。

 

鳩山首相は、こんどは、どういう“殺し文句”と具体策、実績を提示できるか。ハネムーン後半の11月からが、長期政権か、短命かの岐路となる、ほんとうの正念場となろう。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その5

建物と庭園との一体化が、根津美術館の魅力のひとつです。

 

 

いま、世間を騒がせている連続不審死事件は、強盗殺人に匹敵する怖い事件だと思う。ごくふつうの日常生活のなかで、だれに咎められることもなく、自殺や火災にみせかけて、殺人がおこなわれていた。

 

着飾って高級車を乗り回す、セレブな女によって。

 

こういうのは、ほんとうに怖い。人間不信になることほど、切ないものはないのだ。

 

不審死した4人の男性は、甘い声で囁く女に、およそ警戒心など抱いていなかったと思う。安心しきっていなければ、あわせて9200万円もの大金を女のいうままに渡すわけがない。

 

天国に誘って地獄へ突き落とした、34歳のサソリのような女。まったく、背筋が寒くなる事件だが、将来も似たような犯罪が続発するおそれがある。

 

今回の事件の背景には、「婚活」と「介護」という社会問題があって、2つともますます深刻になっていくのは、まちがいないからだ。

 

「婚活」と「介護」というのは、それ自体では結びつかないが、やさしさが求められている点で共通している。やさしさが交差するなかで、偽りのやさしさを見破るのは容易ではない。

 

それにしても、時代が変わったのか、男性のほうがだまされやすくなったように思う。昔は、結婚詐欺の被害者といえば、だいたい女性であった。

 

ところでメディアは、この事件を結婚詐欺にウエートをおいて報道しているが、老人殺人のほうにもっと関心を寄せるべきだ。財産のある高齢者を狙って、鵜の目鷹の目の時世。高齢者に忍び寄る不心得者をどう撃退するか。これは、社会全体で考えるべきテーマといえよう。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その3

根津美術館は、実業家の初代根津嘉一郎のコレクションを広く一般に公開するために、昭和161941)年に開館しました。

 

 

 

 

けさの産経新聞をひらいて驚いた。なんと民主党の新人議員が、泣く子も黙る小沢一郎幹事長ら党執行部を批判しているではないか。元愛知県犬山市長で、ワーキンググループ、すなわち「事業仕分け人」メンバーの石田芳弘衆議院議員が、選挙対策ばかりを強調する姿勢を痛烈に批判していた。

 

当欄では、しばしばおとなしくなった民主党議員をとりあげてきたが、やっぱり骨のある人はいた。

 

けさの朝日新聞によれば、「事業仕分け人」の人選が、いまだに難航しているという。仙谷由人行政刷新相が人選の見直しをすすめているが、27日も小沢幹事長の同意が得られなかったとか。党側は、新人議員ではムリだと、全員をメンバーからはずすことを求めているが、石田氏は、産経新聞で、こう反論していた。

 

<当選1回生は、政治の世界の手練手管は素人かもしれないが、市民感覚をくみとる能力はより優れている。「永田町ズレ」していない1回生の新鮮な感覚を予算の見直しに生かすべきだ>

 

わたし自身は、事業仕分けは新人議員には荷が重いのではないか、と思っていたが、同じ新人でも首長出身は、ちょっとちがうという感じは抱いていた。今回、石田氏の主張を知って、これならメンバーに入れてもいいかもしれないと思った(詳しくは産経新聞を)。

 

石田氏は、さいごにこう結んでいた。

 

<つぎの選挙のことをいうのは「政治屋」、つぎの時代を語るのが「政治家」だ。党側も選挙のことばかりではだめだ。わたしだけでなく、みんなが思っている>

 

この石田氏の勇気ある発言に、大きな拍手をおくりたい。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その3

ご覧のような長いアプローチを通って美術館へ入ります。

 

 

衆議院本会議場で、初の所信表明を終えて席に戻った鳩山由紀夫首相を菅直人副総理が拍手で迎え、笑顔で握手した、と、きのう書いたが、以下は、そのつづき。

 

イラ菅といわれるように、どちらかといえば苦虫をかみつぶしたような、怖い顔が多い菅さん。それが、ホールインワンをだしたときのような、にこやかな顔。

 

3年に1度くらいの、まさに絵に描いたような喜色満面の表情であった。

 

高校の弁論大会のような鳩山さんの演説の、どこにそれほど感動したのだろうか、という感じ。あの満面の笑顔は、ちょっとミステリアスであった。

 

一夜明けたきょう、朝日新聞をひろげたら、「閣僚で唯一 菅氏に言及」という記事がでていたので、あ、こういうことだったのか、と、やっとナットクできた。

 

さきほど<高校の弁論大会のような>と、つい口にしたが、正直に告白すると、じつはそんな偉そうなことをいえたものではなかった。鳩山演説をあまり真剣に聞いていなかった。その日の夕方に配達された夕刊に所信表明の全文が出ているのだが、これも読むのを忘れていた。

 

あわてて夕刊を読んだら、たしかにこんなくだりがあった。

 

<今後もまた、わたしと菅副総理のもと、国家戦略室において財政のあり方を根本から見直し、「コンクリートから人へ」の理念に沿ったかたちで、硬直化した財政構造を転換してまいります>

 

朝日記事には、<所信表明に閣僚の名前を入れるのは異例。政権内で浮上する「菅外し」の動きを封じ、首相自ら菅氏との連帯感を示す狙いがあったとみられる>とある。そのとおりで、菅さんが感動するのも当然だ。

 

鳴りもの入りの「国家戦略局」構想だったが、ケチばかりついている。戦略室から戦略局への昇格に必要な法案の提出は見送られるし、菅さんが兼任するはずだった党の政策調査会長も廃止された。世間からも、「国家戦略局」という名称そのものに反対論がくすぶるなど散々だ。

 

おかしなことに参院民主党では、政策審議会がそのまま存続するのである。菅さんが、カチンときているのは、明らかだ。

 

それにしても、鳩山さんという政治家は、したたかである。演説に菅さんの名前を入れたのは、もっと深謀遠慮があるとみてよい。つまり、小沢一郎幹事長への牽制だ。

 

ここまで書いたところで、いきなり林彪の顔が浮かんできた。毛沢東が、自分の後継者として林彪を指名し、それを法的に保証したにもかかわらず、林彪はクーデターを敢行した。有頂天になったうえ、待てなかったのである。

 

鳩山さんは、所信表明に菅さんの名前を書き入れたが、後継者に指名したわけではないので、林彪とはちがう。賢明な菅さんは、そんなことなど百も承知だろう。これからも、じっと我慢の子でいると思うが、小沢シフトで鳩山首相が頼りにしているのは自分だけという自負心は、一段と強まったはずだ。

 

〔フォトタイム〕

 

新・根津美術館その2

新しい根津美術館は、隈研吾氏の設計。「和」を基調にし、垣根も竹林でした。

 

 

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