以前、旅行好きの中年の女性に、「これまでの海外旅行で、どこが一番印象的でしたか」と聞いたら、「そうですね、アイスランドかしら。よかったですよ」といったものだ。先日、当欄でイギリスの調査会社エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる世界平和指数で、日本は140か国・地域のなかで世界5位であった、と書いたが、このときの1位はアイスランド。きのうも、テレビでアイスランドを取り上げていた。
アイスランドは10万3000平方キロ㍍の領土に、人口はわずか30万人。半数以上が、首都レイキャビクに住んでいる。ちょっとデータは古いが、2005年版「世界の国一覧表」(世界の動き社発行)によると、「1人あたりGDPの大きな国(2003年)」でアイスランドは7位(3万6711ドル)。ちなみに、日本は8位(3万4010ドル)だった。いま、世界がアイスランドに注目するのは、再生可能エネルギーで全消費量の80%をまかなっているからだ。
「ニューズウイーク日本版」5月28日号に、<アイスランドは電力優等生>という記事が載っている。ダニエル・グロス記者のリポートの書き出しは、こうだ。
<ブルーラグーンは、アイスランドでもっとも「ホット」な観光スポットだ。記者が訪れたのは3月。近くの地熱発電所から立ちのぼる水蒸気が横なぐりの雨にかき消される寒い日だったが、ブラジルの若者グループや日本人カップル、アメリカ東海岸の名門私立校から来た高校生の一団が、乳白色の温泉に入り、二酸化ケイ素を含んだ泥を体に塗りたくっていた>
皮膚病に効くというので、ブルーラグーンの温泉施設には、年間40万7000人が訪れる。この施設ができたのは、まったくの偶然からだ。地熱発電所が排水を放出しはじめると、そこに含まれる塩分と藻類と二酸化ケイ素が水流をせき止め、殺風景な溶岩原に温水プールができたのである。それが皮膚病にいいことがわかって、大繁盛することになった。
アイスランドの断層は、熱源として使えるマグマをたっぷりとたくわえている。そこで地熱発電所が、大活躍することになる。ほかに水力発電もあって、電力にかんして化石燃料は必要なし。住宅の暖房も、地下の温水でまかなわれる。アイスランドで化石燃料を使うのは、車と漁船だけ。地熱発電で観光客を集め、水力発電で大企業を誘致するアイスランドのエコ作戦は、いまのところ大成功である。
〔フォトタイム〕
政策研究大学院大学その1
八田達夫学長によれば、政策研究大学院大学は、<政策および政策の革新にかかわる研究と教育を通して、わが国および世界の民主的統治の発展と高度化に貢献することを目的として、1997年に設立された大学院大学>です。