2007年12月

大晦日の除夜の鐘はいいものだ。人間には、108の煩悩があるが、鐘をひとつ、ゴーンとつけば、煩悩がひとつ、たちどころに消えてしまうというのだ。じつに、わかりやすい。テレビで聴くだけでもいいのだから、寺院ではもっと荘厳に響いているのだろう。しかも身を切るような寒さのなかである。

 

その場で聴いてみたい鐘が、いくつかある。そのひとつに、京都にある浄土宗総本山、知恩院の大鐘がある。ここは法然が、はじめて念仏の教えを説いたところだ。寛永13(1636)年に鋳造された大鐘は、日本3大名鐘のひとつだという。高さ3・3㍍、口径約2・8㍍、厚さ約30㌢で、鐘楼とあわせて国の重要文化財に指定されている(下段の写真)。除夜の鐘には、一山の僧侶17人によって、鐘がつかれるという。さぞかし、壮観にちがいない。

 

ことし3月、知恩院の隣の青蓮院を訪れたとき、小ぶりの鐘を若い女性たちが、ついていた。いかにも楽しそうであった。鐘には、音色だけではなく、人をひきつけるなにかがあるのかもしれない。ともあれ、除夜は、静かに鐘に耳を傾けることにしよう。ことし一年、ぶじに終えられたことに感謝しながら。

 

〔フォトタイム〕

 

皇居前その1

皇居のお堀端にきますと、心がなごみます。これだけの広々とした空間をもったパレスの前景などは、世界のどこにもありません。



 

 

いま発売中の『正論』2月号に、寛永寺の浦井正明執事長が、<「江戸の教え」はこんなにも豊かでした>という題で寄稿している。それによれば、江戸市中の手習い所は、すでに享保期(1716年~35年)で800もあったという。ここに子どもたちは7、8歳で入門し、読み、書き、そろばんを中心に3年から4年ほど学んだ。当時、世界で、これほどまでに庶民の子弟の教育が徹底しておこなわれた国は、ほかになかったと思う。

 

当然、武士になれば、もっとレベルが高かった。各藩には、藩校があり、そのなかで優秀な成績をおさめた子弟は、江戸の昌平黌(しょうへいこう)へすすむことも可能であった。江戸時代は、身分社会ではあったが、半面、実力社会でもあった。知的能力の高い若者が優遇された。長男に生まれても、弟のほうが賢ければ、家督相続が逆転することもあった。これは戦国時代も同様である。

 

小和田哲夫著『戦国武将を育てた禅僧たち』(新潮選書)によれば、上杉謙信は、長尾為景の次男とされているが、実際は3男、場合によっては、4男以下の可能性もあるという。長兄の晴景とは、18歳ほどの年齢のちがいがあった。父親の為景は、迷わず、長兄の晴景に家督を譲った。しかし、父親の死後、愚昧な城主に家臣団は、苛立った。まだ、少年にすぎない弟の謙信を擁立しようと、一部家臣団が動き始めた。謙信は、7歳から14歳まで、禅寺できびしい教育をうけていた。家臣団の動きを察した晴景は、兄弟戦争の準備をはじめたが、当時の守護、上杉定実が調停に乗り出した。

 

同書によれば、定実は、「謙信を晴景の養子にして、長尾家を相続させる」という案を示し、これに晴景が応じた。そのため、戦いにはいたらず、平和的な解決になったという。おそらく晴景の側近が、強く進言した結果にちがいない。リーダーに才覚が欠けていても、才知ある腹心が控えていれば、マイナス点は最小限に抑えられるのだ。突っ走ることのなかった晴景も、ほめてやるべきだろう。こうして謙信は、弱冠19歳で春日山城へ入ったのである。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その7

昔の話ですが、団十郎さんが30代くらいの頃、ご自宅を訪問したことがあります。そのとき、団十郎さんが、「江戸の人たちは、カブキのセリフを日常語のように理解していたのです」と、教えてくれました。カブキのセリフは、けっこう古典などが散りばめられていて、ある程度の素養がないと、わからないところもあります。江戸市民の知的レベルは、かなり高かった、と、団十郎さんは、いいたかったのでしょう。写真は、歌舞伎座の裏側のほうです。



 

厚生労働省が公表した「2005年都道府県別生命表」で、平均寿命がもっとも長い都道府県は、男性が長野県で7984歳、女性は沖縄県で8688歳とわかった。この生命表は、昭和40(1965)年から5年ごとに作成され、ことしが9回目。沖縄の女性は、昭和50(1975)年から7回連続のトップだ。

 

沖縄は、日差しが強いうえに高温多湿で、生活環境としては、恵まれていない。それでも女性たちが長寿を誇っているのは、なぜであろうか。月刊「清流」1月号で沖縄出身の噺家、藤木勇人さんが、その秘訣を語っていた。藤木さんは、元気の素(もと)としてつぎの4点を挙げていた。

 

1、沖縄の食べもの

2、ストレス解消のことば

3、密な家族関係

4、世代間コミュニケーション

 

沖縄の食材といえば、ゴーヤー、野菜パパイヤ、へちま、島にんじん、もずく、海ぶどう、アーサなど沖縄の畑や海からとれたものばかりで、基本的には素朴な料理だという。素朴だが、栄養バランスのよい料理が、沖縄の長寿を支えているという(ただし、沖縄の男性は、食生活が洋風になったためか、中高年の死亡率があがって、今回の順位は、25位になっている)。

 

沖縄の元気な女性は、よく「なんくるないさ」というそうだ。「どうにかなるさ」という意味で、これが人の心を萎縮させるストレスを取り去ってくれる。ほんとは、重い意味をもったことばで、過酷な時代を経験した沖縄の女性たちの魂の叫びがこめられているのだが、いまは底抜けのあかるさで、人々にやすらぎを与えているのだ。

 

それにしても、沖縄にかぎらず、日本の女性の強さには、驚くばかりだ。現在、100歳以上の人は、3万人を超えているが、その85%は、女性である。

 

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〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その6

カブキは、傾(かぶ)きに由来しています。傾きとは、時代のファッションであり、その先端をいくことです。歌舞伎というと、なにか、古臭く、時代遅れのサンプルみたいですが、本来は、流行に敏感なのです。



 

東京農業大学広報部が発行する「新・実学ジャーナル」No48(12月1日発行)に、同大の徳江千代子教授が、「消費期限と賞味期限」について書いていた。どこが、どうちがうのだろうか。食品の安全性について、とかく問題が多い昨今、食品表示の正しい知識は不可欠だ。徳江教授によれば、消費期限は、「いたみやすい食品」、賞味期限は、比較的「いたみにくい食品」が対象だという。

 

<消費期限は、弁当や惣菜、調理パンなどに表示され、製造日より5日以内に悪くなるようなものが対象で、期限をすぎたら、「安全ではない」ことを示している(年月日表示)。もし食べてしまって、何か問題が起きても自己責任ということになる>

 

<賞味期限は、その日付までならメーカーが、品質を保証し、おいしく食べられることを意味する(年月日表示)。だから、期限をすぎたから、もう絶対に食べられないというわけではない。製造日から三か月を超す場合、「年月」でよい>

 

「開封したら、お早めに」と書いてあるが、この場合の「お早めに」は、1日だけなのか、それとも1週間なのか。できれば、具体的に書いてほしいが、徳江教授によれば、「開封後の環境は、メーカーに予想ができないので、消費者の自己判断に任せられている」のだとか。要するに、なるべく早く食べることに尽きるのである。

 

〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その5

間口15間、奥行き11間で、2600人も入ることができます。立ち見席に若者の姿をみつけると、昔の自分を思い出して、うれしくなります。目の肥えた観客がいないと、伝統芸能はすたれてしまうのです。



 

 

片野ゆか著『ダイエットがやめられない』(新潮社)という本をぱらぱらとめくっている。だんだんとメタボが気になってきたのである。美味しいものをたっぷりたべて、酒を飲んだうえに、なんの苦労もせずに痩せられる方法などあるはずもないのだが、なにかいい情報はないかと、さっきから探している。

 

なんと、ダイエットよりも減量手術を望む人がいるという。いままで減量手術など存在することも知らなかったが、たくさんの希望者がいるというのには驚いた。同書によれば、「Yahoo! ニュース」がことしの3月6日から11日にかけて、「もし、あなたが、治療が必要なぐらいの体格だったら、減量手術とダイエット、どちらを選びますか?」という意識調査をおこなったという。投票総数は、1万478票で、ダイエットを選んだのが6868人で全体の66%、減量手術が3610票で34%だったとか。手術ということばを聞いただけでも、拒否反応を起こす人が少なくない世の中で、これは意外だった。もっとも著者も指摘しているように、アンケートに答えた人が、どれだけ減量手術について知っていたかどうかはわからない。

 

減量手術が盛んなのはアメリカで、重症肥満者には、胃バイパス術をおこなうという。これは胃を2つに切り分けて小さいほうを小腸につなぎ、たべる量をへらすのだという。こういうことを知れば、減量手術を希望する人は途端に減少するにちがいないが、これはあくまでも標準体重より50㌔以上オーバーの重症肥満者の例である。

 

同書によれば、日本では、大分大学病院で2種類の肥満治療手術がおこなわれているそうだ。1つは、胃内バルーン留置術。シリコン製の風船を胃のなかに入れ、生理食塩水でふくらませて、少量の食事で満腹感を得るというもの。風船は口から内視鏡をつかって胃に入れられ、その所要時間は10分ほど。半年に1回、風船を交換する。もう1つは、胃バンディング術。胃の上部をシリコン製のバンドで縛り、食べものを通りにくくするものだという。

もっとも、手術をうけたからといって、たちどころにスリムになるわけもあるまい。やっぱり、さいごは日々の努力以外に妙案はないはずだ。

 

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<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

12月27日、ウメ開花(神代)。

 

〔フォトタイム〕

 

歌舞伎座その4

戦災にあった歌舞伎座が復興したのは、昭和26(1951)年でした。この建物は、国の登録有形文化財になっています。



 

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