2007年10月

きのう、福田康夫首相(自民党総裁)と民主党の小沢一郎代表が会談し、45分間にわたって話し合った。両党首ともに、密談ではないというが、これほどわかりやすい秘密の会談はほかにあるまい。なぜなら、密談でなければ、それまで同席していた双方の幹事長と国対委員長を外に追い出す必要はないからだ。

 

ヒトラーは、大勢の取り巻きと食事やお茶を飲んだりしているとき、緊急のメモが入ると、部屋に残る人間を指名し、あとは「出て行け」と命じた。密談するためである。

 

なぜ密談するのか。いうまでもないが、ほかの人間に聞かせたくないことを話すからだ。世間話をするために、側近を遠ざけるトップなど、どこにもいない。政党において総裁(代表)と幹事長は、2人3脚である。その幹事長すら、排除したというのは、ただごとではない。インド洋での海上自衛隊の補給活動継続問題をめぐる党首会談は表向きで、もっと重要な事柄を話し合ったのはたしかであろう。

 

大連立とか、解散とかを具体的なテーマとして、お互いの腹の内を割って話し合ったのか。それとも、これらのテーマを念頭に、禅問答が展開されたのか。両党首の性格からして、ひょっとしたら前者かもしれない。おそらく、福田首相からは、トップシークレットの機密事項が小沢代表に伝えられたと思う。ときの政権担当者と野党トップの決定的な差は、情報である。内閣総理大臣が、他の大臣や与党幹部を圧倒するパワーの源泉もまた、首相だけが知りえる情報にある。

 

かつて小泉純一郎首相が訪米した際、ブッシュ大統領は、CIA報告の席に小泉首相を同席させた。これほどの厚遇は、ほかにそう例があるまい。

 

福田首相は、毎日のように担当官から情報報告をうける。あくまでも推測にすぎないが、小沢代表には、アメリカのホワイトハウス情報も含め、最高機密が伝えられたのではないか。それが、幹事長と国対委員長はずしの、もうひとつの理由であったのではないだろうか。

 

いずれにしても福田・小沢密談に落ち着かないのは、公明党であろう。もし自民党と民主党の大連合となれば、公明党は吹き飛ばされてしまう。これまで公明党は、小沢代表に何度か煮え湯を呑まされてきたので、相当の警戒心を抱いているはずだ。日本経済新聞10月22日付朝刊の「私の苦笑い」という欄で、公明党の前代表、神崎武法氏が、「まさか党首選に勝って解党するとは思わなかった。新進党党首だった小沢一郎氏の出方が読めなかった」と、10年前の出来事を回想している。<このとき、小沢氏は党首選に勝利したものの、解党を宣言。新進党は結党わずか3年で幕を閉じることになった。新進党に合流した旧公明党グループには今も小沢氏の「独走」が原因で解党に至ってしまったとの認識が強い>が、神崎氏は、ここで<「政治は生き物」「予断は禁物」。新進党解党劇は、政治の怖さを痛感した出来事だったといえる>と結んでいる。たしかに、政治は生き物であり、あす、なにがあってもおかしくない世界である。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

11月1日、イチョウ黄葉(光が丘)、コブクザクラ開花(野川)、ツワブキ(旧芝離宮=いずれも東京都公園協会「花のカレンダー2007」より。以下、同じ)。

11月2日、サラカシ・マデバシイの実落果(城北中央)。

11月3日、文化の日。紅葉見頃(神代)、ハゼノキ紅葉(清澄・旧古河)。

 

〔フォトタイム〕

 

経済産業省その4

真向かいは、官庁のなかの官庁といわれる財務省です。しかし、昨今は、「大通りのむこうより、こっちのほうが、やりがいがある」という声もあるほど、経済産業省の存在感は高まっています。



つぎつぎと明るみにでる守屋武昌・前防衛次官の所業については、あきれてものがいえないくらいだが、ひとつだけいっておきたい。ゴルフ場で夫人とともに、偽名を使っていたという点だ。きのうの証人喚問で、守屋氏は、偽名は先方からの依頼だったと述べていたが、それは言い訳にもならない。推測するに、要するに、夫婦ともどもゴルフバッグをプレゼントされる際、先方からバッグにつけるタグ(名前)を変えたほうがよい、といわれたのだろう。ご本人が名乗っていた「佐浦丈政」は母親の旧姓だという。偽名は、双方ともにうしろめたいところがある、証(あか)しといってよい。

 

ゴルフ場では、氏名、住所、電話番号を書かされる。守屋氏は、住所と電話番号もごまかしていたのだろうか。ゴルフというのは、危険なスポーツである。どこから、ボールが飛んでくるか、わからない。とんでもない方向へボールを打って、他のプレイヤーにぶっつけてしまう、あるいは他のプレイヤーからぶっつけられるおそれが、つねにある。ぶっつけられたときは、「ごめんなさい」、「大丈夫ですよ」で終わっても、あとで後遺症が出るかもしれない。そこで話し合いが必要だと、クラブに問い合わせたら偽名だったというのでは、紳士のスポーツもへったくれもない。

 

あるがままに、というのが、ゴルフの基本。ボールはあるがままに打つ。スコアも自分で申告する。言い換えれば、ゴルフというのは、いくらでもウソをつけるゲームだ。だからこそ、ゴルフは忠実、かつ律儀にプレイしなければならないのだ。守屋氏は、飛び切りのゴルフ人間なのだから、いまからでも遅くはない、正直に自分の所業を洗いざらい申告すべきだ。いずれにしても、ゴルフ場で偽名を使うことは許されない。偽名がよくないのは、なにもゴルフ場にかぎったことではないが。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

10月30日、ツバキ開花(百花園)。

10月31日、大安。メタセコイヤ紅葉(祖師谷・桜ヶ丘)。

11月1日、イチョウ黄葉(光が丘)、コブクザクラ開花(野川)、ツワブキ(旧芝離宮)。

 

〔フォトタイム〕

 

経済産業省その2

本館のうしろに、もっと大きな別館がありますが、今回は本館だけにします。



女優の菅野美穂がインドを訪れた、NHK「プレミアム10――菅野美穂 インド ヨガ聖地の旅」(10月26日夜10時から放映)が面白かった。ヨガといえば、足を複雑に組んだりして、瞑想する姿くらいしか浮んでこなかったので、この番組で紹介されたヨガの多様性に驚いた。

 

デリー郊外のマジュドゥールハトラ公園では、いくつかのグループが、それぞれの様式によるヨガに没頭していた。ヨガの教室もあれば、ひとり、正座して瞑想する人もいる。菅野が、そのひとつのグループのヨガに参加した。胡坐(あぐら)をかいたような姿勢で、組んだ両足をバタバタさせていると、突然、うしろのほうで、ワッハハ、ワッハハ、と、大きな笑い声がした。

 

驚いて菅野が振り返ると、公園のむこうのほうに数10人の中年男性が立ったまま、円陣をつくっている。豪快な笑いに、あの浪越徳治郎氏を思い出した。新婚旅行で来日したマリリン・モンローを指圧し、世の男性を羨ましがらせた人だ。

 

菅野が、このグループに加わった。「では、気持ちよく笑いましょう! いきますよ。1,2,3、ワッハハ」と、リーダーが音頭をとり、それにあわせて、みんなが両手を高々とあげて、声高らかに笑った。ほんとに、気持ちよさそうな笑いである。みていた菅野も一緒になって、ワッハハ、ワッハハ。そして、ラーマ神へのお祈りを108回。これもヨガだという。

 

笑いが、健康に効果のあることは医学的にも立証されている。それは、医学者でなくとも納得できることだ。しかめっ面より、笑顔がいいことは、だれにだって、わかる。おそらくどこかで、笑いを治療に取り入れているところもあるのではないか。患者を慰問する道化師もいると聞く。

 

ことわざは教える。<笑いは人の薬(適当に笑うことは、健康のためによい)>、<笑う顔に矢立たず(笑顔の者は、矢を射かけられることがない)>、<笑う門(かど)には福来(きた)る(いつも笑い声が満ち、和気あいあいとした家には、自然と幸福がやってくる)>、<笑って太(ふと)れ(つねににこにこしていることによって、幸福を招き寄せよ)=以上、小学館の「故事ことわざの辞典」より>

 

しかし、笑いは、いつもプラスイメージで和気あいあいとしたもの、というわけには、いかない。不気味な笑い、お追従の笑い、耳を押さえたくなるような高笑い、人を小ばかにした笑いなどなど、いやな笑いもまた少なくないのだ。

 

『潮』11月号に、作家の村松友視氏が、<笑い方という厄介な世界>というエッセイを書いている。そこに、<男は、いつの日か自分の笑い方をつくる>ということばがあった。卑屈な、追従の笑いが、地位の上昇とともに高笑いになっていく。たしかに、サラリーマン社会では、そういう事例は、どこにもみられるものだ。

 

<私の周囲にも、自分で吐いた言葉に自分で反応し、ハハハハと笑ったあと周囲を見回しながら、笑いを求めるというタイプがいる。しかし、彼は中学生のときにはそんな笑い方はしなかったはずだ。いつの日か何かの理由で身につけた笑い方なのだろう。このタイプは意外に多く、ある年齢以上の集まりなどで、意味のない高笑いだけがひびきわたり、無理矢理に和気藹々(あいあい)の空気をつくりあげているむなしさがただよう場面は、いくらでも想像できるのだ。ハハハハにしろ、ホホホホにしろ、である>

 

そう村松氏は書いていたが、同感する人は、多いのではあるまいか。でも、これは、一部の人の話。できれば、自然に、心の底から笑える日々でありたい。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

10月29日、大池にオオバン(舎人)。

10月30日、ツバキ開花(百花園)。

10月31日、大安。メタセコイヤ紅葉(祖師谷・桜ヶ丘)。

 

〔フォトタイム〕

 

経済産業省その1

この建物を正確にいえば、経済産業省総合庁舎本館となります。



「ニューズウイーク日本版」10月24日号に、「人口爆発で不足するのは次のうちどれ?」というクイズふうのタイトルをつけた記事が載っていた。A水、B食料、C石油となっている。食料か、それとも石油か、というのが、一般的な日本人の感覚である。たしかに双方ともに懸念されているが、この記事の答えは、水。食料や石油不足より、もっと深刻ということであろう。

 

記事によれば、世界中で12億人が水不足のなかで暮らしているという。2025年には、その数はさらに5億人ふえ、世界人口の3分の2が水不足に苦しむとみられている。この地球上には、約14億立方キロ㍍の水があるけれど、そのうち海水が約97%で、淡水はわずか2・5%。しかも淡水の約70%は南極や北極の氷。川の水や湖、沼、地下水など利用可能な飲料水は、地球上の水のうちわずか0・8%にすぎない、と記事は伝えている。

 

かつてイザヤ・ベンダサンは、「日本人は水と安全はタダだと思っている」といったが、たしかにわが国は、世界のなかでは水に恵まれている。人口増に悩む中国は、現在、深刻な水不足に苦しめられている。いつだったか、NHKのドキュメンタリーで、中国の水不足を放映していた。農村部では人工雨を降らせたりし、都市部では水のムダ使いを監視するパトロール隊が出動し、見回ったり、その対策に追われていた。しかし、この程度では、焼け石に水。中国でも水洗トイレがふつうとなり、中国の若い女性が、過剰なまでに洗髪する姿が映し出された。こういう生活様式の変化による水の消費量の増加も人口が多いのでばかにならないし、そのうえに砂漠化など地球環境そのものの変化が追い討ちをかけている。自然的、かつ人為的な変動で、ますます事態は悪化している。日本もまた油断はならないので、ふだんから節水を心がけたいものだ。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

10月28日、サザンカ開花(武蔵国分寺)。

10月29日、大池にオオバン(舎人)。

10月30日、ツバキ開花(百花園)。

 

〔フォトタイム〕

 

ラ・プラース南青山その7

どちらかといえば、若い女性むきのタウンですが、ときにはこういうところへも、迷い込んでみてはいかがでしょう。



クルマは長い間、スティータスシンボルのひとつだった。いまでも、そう思っている人はいるだろうが、昔と比べれば、イメージはずいぶんちがってきている。昔はクルマにこだわる人が断然多かったと思うが、いまはどうなのだろう。たまたま、けさの日本経済新聞に載った福田康夫首相以下、全閣僚の資産公開を眺めていたら、所有するクルマも出ていたので、以下に拾い出してみた。だから、どうなんだ、といわれると、困るが、ただ、意味もなく、ピックアップしたにすぎない。

 

福田首相―――――トヨタクラウン2005年式、トヨタプログレ2004年式(妻名義)

増田総務相――――メルセデスベンツ2007年式

鳩山法相―――――メルセデスベンツ2004年式など3台、日産スカイライン2004年式など2台(妻名義)

高村外相―――――トヨタセルシオ

額賀財務相――――記載なし

渡海文科相――――記載なし

舛天厚労相――――トヨタエスティマ2001年式など2台

若林農水相――――トヨタクラウン1994年式、ホンダシビック1999年式(妻名義)

甘利経産相――――日産エルグランド2006年式、日産ラフェスタ2004年式(妻名義)

冬柴国交相――――トヨタクラウン2002年式

鴨下環境相――――トヨタバン1996年式など2台、マツダステーションワゴン2005年式(妻名義)

石破防衛相――――日産セドリック2001年式など3台

町村官房長官―――日産ローレル1996年式(妻名義)

泉国家公安委員長―記載なし

岸田沖縄・北方相――マツダカペラ1997年式(妻名義)

渡辺金融相――――BMW1992年式など2台

大田経財相――――記載なし(古い自動車を廃車に)

上川少子化相―――トヨタクラウン2003年式など2台

 

このご時世、2台や3台の自家用車をもつ家庭は珍しくもない。むしろ一部の政治家のほうが、クルマに不自由していると思う。というのは、国会議員の多くは、選挙区と東京の双方に生活拠点をもつが、自家用車は選挙区だけという人がけっこう多い。大臣の場合、国から専用車がつくので、マイカーなしでも不便はないが、一般の議員は宿舎と国会の間の行き来は、バスをつかったりしている。かなりの政治家は、意外なほど質素な生活をしているのだ。それはともかく、経済大国、ニッポンの大臣のマイカー一覧をみて、外国人は、どういう感想をいだくのだろう。

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

10月27日、ツワブキ見頃(日比谷・百花園・小石川)。

10月28日、サザンカ開花(武蔵国分寺)。

10月29日、大池にオオバン(舎人)。

 

〔フォトタイム〕

 

ラ・プラース南青山その6

街歩きのたのしさは、大通りのちょっと横に、思いがけない空間が広がっていることです。



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