けさの産経新聞によりますと、上野公園はきのう、大勢の花見客で賑わったそうです。約670本あるソメイヨシノは、まだ3分咲きとか。
満開まで、待てないんですよね。それに、せっかく咲いても、雨つづきということもあるかもしれないし。桜が大好きな日本人にとって、花といえば、文句なしに桜です。
ところが、万葉人にとって、花は萩であり、梅でした。万葉集では、萩が138首、梅が118首も読まれているのに、桜は42首にすぎないそうです(中尾佐助『花と木の文化史』)。
梅は中国から入ってきました。奈良時代は、梅を愛(め)でるのが、上流人の間で流行ったようです。
平安時代の古今和歌集のころになりますと、こんどは桜の歌が多くなります。古今和歌集「春歌」上下2巻(134首)の6割以上は桜です。
世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
有名な在原業平(ありはらのなりひら)の歌ですね。この世に桜がなければ、春はのどかな気分でいられるのに、桜のために心ときめいて、ソワソワ、ウキウキして落ち着かない方々が、いまの世にも多いはずです。
願はくは花の下にて春死なん
そのきさらぎの望月のころ
これまた有名な西行の歌ですね。和歌や俳句で、花といえば、西行の時代も、平成のいまも桜ということになります。
春なれや桜を見むと堀のべに
われは来にけり人もきにけり
昭和天皇の御製(ぎょせい)です。天皇の歌を御製、皇后や皇太子、皇族の歌を御歌(おうた)といいます。
それぞれに、自分の好きな花見の場所というものがあります。皆さんのお好みは、どちらですか。
(3月27日のアクセス数1614件)
〔フォトタイム〕
国立劇場の桜
3月24日、憲政記念館から社へ戻るとき、ちょっと遠回りして国立劇場前を歩きました。予想通り桜は咲いていました。