何年も前からうんうん唸りながら書いてきた本がようやく刊行されることになった。「北朝鮮のキム・イルソン(金日成)にかんする書籍はたくさんあるが、読んで面白いのはこの本がいちばん」と、自惚れながらそう自負している。
芙蓉書房出版から9月10日の発売で2484円。「新書なら、3冊か4冊に切り売りして出せる内容だね」と、出版関係者からいわれたが、あえて1冊にこだわった。そのかわり分厚い本になったおかげで、定価が高くなってしまった。
1冊にこだわったのは、キム・イルソンの82年間の生涯は、そのかなりの部分が北朝鮮史そのものであり、歴史というのは連続性においてとらえるのがいちばんだからだ。長いスパンでこの人物を見つめることで、いままで見えてこなかった部分も浮かび上がってくる。
「ああ、そういうことだったのか」と、目からウロコというか、ストンと腑に落ちるところもすくなくないはず。エピソードもふんだんに織り込んだ。
今回の執筆にあたっては、テレビの放映をずいぶん活用した。「金日成」ではなく「キム・イルソン」にしたのも電波メディアに右ならえしたからだ。
「キム・イルソン(金日成)の後頭部には、大きなコブがあった。大人のこぶしくらいのかたまりが右耳の近くから首筋の真ん中をすこし越えるところまで広がっていた。コブ取りじいさんの民話に登場する善良な翁と欲張り老人のコブは、絵本ではふっくらと描かれる。いかにもブヨブヨした感じだが、この国の最高指導者のコブは硬かった」というのが、「第一章 <プロローグ>大きなコブをめぐる逸話」の書き出し。
ぜひ、このつづきも読んでいただきたい。
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